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恋はいつでも平行線【完結】
第28章 *二十八*
 それは、とても不思議な光景だった。

 青い満月の下で、黒い影と、月の光を受けて碧く光る膜を張った水が対峙している。

 幻想的にも見える光景だったけれど、音もなく震え始めた黒い影が伸び上がり、黒い霧状のモノに霧散して、あたりを墨一色に塗り替えた。
 それは煙のようにも見えたし、霧や靄のようにも見えた。
 最初は臣哉が立っている場所だけだったのが、徐々に広がり、青を飲み込んだ。

「あっ……!」

 わたしの声が聞こえたのか、黒い霧がにやりと──笑ったように、見え……。

 霧散した黒い影は急速に縮まったと思ったら、今度はものすごい速さでわたしの元までたどり着き、そして、わたしもそれに、あらがう間もなく飲み込まれてしまった。
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