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恋はいつでも平行線【完結】
第33章 *三十三*
     *

 今日もあの日と同じように、雲一つない空に満月が浮かんでいた。
 そのため、足下は思ったより明るい。とはいえ、月明かりだけでは心許ないので、LEDのランタンを持って、山を分け入った。

 久しぶりに入った山の中だったけれど、幼い頃の記憶とほとんど変わっていなくて、向かう場所がどこかというのはすぐに分かった。

 幼い頃のわたしは、とてもおてんばで、実は近寄ってはいけないと言われた神域近くまで、何度も行ったことがあった。
 さすがに神域は竹でできた柵で囲まれていたので入らなかったけれど、隙間からのぞいたところ、見たことがないほどの透明な水を湛えた池があるのが見えた。

 山の中を歩くこと、一時間弱。
 何度か来たことのある、神域までたどり着いた。

「……で、青。どこ?」

 青は神域の近くに臣哉がいると知り、雪さんとは別でサーチをしてくれたという。だからそうたずねると、後ろから無言で臣哉がいると思われる場所を指さした。
 そこは、神域からずれていて、かなりホッとした。

「……その先に、洞窟がある」

 そう言われて、思い出した。
 一度だけ、入ってみたことがある。
 それほど大きくなくて、洞窟というより、洞穴みたいな場所だった。

「そこにあいつ、囚われている」
「囚われて……いる?」
「そこは鍾乳洞みたいになっていて、あいつは椅子みたいになってる石の上に座らされて、天井から落ちてくる水を飲んで、かろうじて生きている」

 え、それって……どういう、こと?

「見れば、分かる」

 青はそう言うと、黙ってしまった。

 そして、わたしたちは臣哉がいるという洞窟に向かった。
 洞窟はすぐに分かり、ランタンの明かりを頼りにして、中へ進んだ。
 天井の高さはかろうじて立って歩けるほどで、幅は人が一人、通れるくらい。
 少し進むとぽっかりと開けた。
 ランタンを高めに掲げて中を見回せば、洞窟の行き止まりのところに、青が言ったように椅子状になった場所があり、そこに見覚えのある男が、ぐったりと腰掛けていた。

「臣哉!」

 思わずそう声を掛けた後、青に腕を引っ張られた。

「下!」
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