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恋はいつでも平行線【完結】
第13章 *十三*
 ──とはいえ。
 初めてだったから比較対象はないけれど、臣哉とは気持ちがよかった。
 だけど、結婚はそれだけではないのだ。
 身体の相性がよくったって、あんな思いやりの欠片もない男と結婚なんて、本当に嫌だ。

「わたし、臣哉のこと、大っ嫌いだから!」

 わたしは二人にそれだけ告げると、涙と鼻水まみれの顔のまま、走って自分の部屋へと戻り、鍵を掛けるとベッドに潜り込んだ。

 今日の朝は、いつもの朝と変わらないと思っていた。
 それなのに……。

 朝が苦手な臣哉が朝から来たのは、伯父さんから鍵を奪ったことを知られる前にと思っての行動だったと今なら分かる。
 臣哉は最初から、わたしを犯すつもりでここに忍び込んだ。

 それを見抜けなかったばかりか、むしろ、あおるような状態だったのを思い出すと、悔しくて仕方がない。

 部屋の鍵をきちんと掛けていたら、話は違っていた。
 自分の油断もあったけれど、それでも……。

 そこまで考えて、わたしは頭を振った。
 過去を思い出して、後悔したり、反省することはできる。
 だけど、それをしたからといって、時間は巻き戻らないし、過去には戻れない。
 臣哉に処女をあげちゃったような状況だけど、過ぎたことだし、いつかだれかとすることであったのだから、それが臣哉だっただけだと──最初が気持ちよくて、よかったと、そう思うことにしよう。
 割り切れないけれど、そう思うしかない。

 それに……。
 臣哉のとった行動は赦されたものではないし、された行為は悲しいけれど、それでも、あまり強く言えないのは、悔しいけれど気持ち良かったというのもあるからだ。
 だからもう、それはそれで良かったと、諦めよう。

 悔しい気持ちが強いから涙が止まらないけれど、今日は涙を出し切って、明日からのことはまた明日、改めて考えよう。

 わたしはタオルに顔を埋め、自分の心の赴くままに、泣いた。
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