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恋はいつでも平行線【完結】
第17章 *十七*
 そんなこんなで、奥院に連れて来られ、ようやく雪さんは網を外してくれた。
 ちなみに、母と姉は来ていない。

「まあ、ゆず、怒りはしないから、そんなに不安そうな顔をするな」

 とは祖母。
 雪さんは祖母を支えながら中に入り、わたしも中に入るように促してきた。

 ちなみに、奥院と言っているここは、母屋の離れだ。
 離れの裏には、神田家の命である、酒造りに必要不可欠な水がわき出る井戸がある。

 神田家の主神は、人間の命の源である水。
 水龍でもなく、水の神様でもなく、水を祀っているという。
 わたしの先祖は、一滴の水のおかげで命を救われたらしく、それ以来、水を崇めるようになったという。
 水を崇めるってのも不思議だけど、どうしてそれにお酒が必要だったのか、よく分からない。
 推測だけど、水がなければ主食のお米を育てられず、お米ができたらそれを元にお酒を造り、水に感謝していた……のではないだろうか。
 あるいは、わたしの先祖が単に酒好きだっただけ……というのもあり得る。
 そっちの線の方が有力だと思うけれど、それでも、今までずっとこうして連綿と続いている。

 雪さんは祖母を定位置に座らせると、夕飯の支度をしてくると告げて、奥院から出て行った。
 取り残されたわたしは、祖母の前に力なく座り込んでじっと待つことしかできなかった。
 逃亡したかったけど、雪さんには勝てない。
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