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恋はいつでも平行線【完結】
第2章 *二*
 臣哉はそう言うと、掛け布団をわたしの手から奪うと、思いっきり遠くへ放り投げた。

「ちょっと、なにするのよ!」

 ここで抗議するのは間違ってないと思う。むしろ、しないほうがおかしい。
 それなのに、臣哉は鼻でふんっと笑ったあと、片眉を上げ、流し目をしてきた。
 え、ここでそんな、色気だだ洩れの表情するのっ?
 でも、そんな表情をしてきたって、わたしは負けない!

「抵抗、するんだ?」

 するに決まっているじゃないの!
 しなかったら、わたしの貞操の危機ですよっ!

「そういう態度を取られると、俄然、やる気が出るな」

 やる気を出すところ、間違っていると思います!

「よっと」

 臣哉のかけ声とともに、ベッドがきしむ音がした。
 え、本気なのっ?
 だって臣哉、わたしのこと、嫌ってるよね?
 それとも、女ならだれでもいいってこと?

 ……臣哉なら、それはありそうだ。

 そう思った根拠は、臣哉の普段の言動からだ。

 臣哉の見た目はちょっと怖いけれど、それでも顔は整っているというのもあり、黙っていれば女性から近寄ってくる。
 でも、それは嫌だと言って、自分が好みの女性に声を掛け、怖いといわれて逃げられて玉砕というのがパターンだ。成功したところを見たことがない。

 臣哉曰く、寄ってくる女性は自分の好みではないのだそうだ。
 臣哉に声を掛けてくる女性は、気の強そうな、いかにも遊び慣れてますって感じの人が多く、臣哉が声を掛けるのは、小さめで大人しい、いかにも女の子って感じの子ばかりだ。
 わたしはどちらかというと、遊び慣れてはないけれど、見た目だけ言えば、前者に含まれる。

 この間もかわいらしい女の子に声を掛けて、脱兎のごとく逃げられているのを見かけた。
 あまりにも相手されないから、とうとうおかしくなっちゃって、手っ取り早くわたしでと思ってるの?
 そう思っていそうで、すごく嫌だ。

 わたし、最初は大好きになった人とと思っていたのに、臣哉はないわ。
 臣哉は仕事仲間だから付き合っているけれど、そうでなければ向こうからも近寄ってこないだろうし、こちらからも近寄らないような間柄なのだ。
 仕事仲間と身体の関係を持つなんて、あり得ないんですけど!
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