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喰われる人妻 菜穂
第32章 喰われる人妻 菜穂(32)
「これは凄く良い話だと思うよ、給料もその辺でパートで働くのとは比べ物にならないし、たぶん3倍か4倍は出るんじゃないかなぁ。いや、菜穂ちゃんの頑張り次第ではきっともっと貰えると思うよ。」
「3倍か4倍……そんなに……」
「そっ、良い話だろ?よし!じゃあ決まりだな!」
「えっ!?」
「実は今日はもう契約書も持ってきたんだ、それにささっとサインしてくれればいいからさ。印鑑持ってきてくれる?」
「印鑑って……ちょ、ちょっと待ってください、あの……私はまだ……」
「大丈夫だよ、怪しい契約書なんかじゃないから。」
「そ、そうじゃなくて……」
「いいから早く持ってきな。」
突然近藤に契約書を出され、印鑑まで要求された菜穂は当然慌てた。
「こ、近藤さん、そんな急に言われても……私……」
当たり前だ。こんな急な話で契約書にサインなんてできる訳がない。しかもあの天野の秘書なんて。
しかしそんな菜穂に対して、近藤は表情を一変させてこう言い放った。
「菜穂ちゃん、君と小溝のために言うが、断らない方がいいぞ。」
先程まで笑顔を見せながら穏やかに会話をしていた近藤の目つきが、人が変わったように鋭くなった。
背筋にゾクゾクと寒気が走る。
――何……?さっきまでの近藤さんとはまるで別人……――
態度を急変させてきたそんな近藤に、菜穂は恐ろしささえ感じた。