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喰われる人妻 菜穂
第38章 喰われる人妻 菜穂(38)
洗濯と掃除を終わらせた菜穂はシャワーを浴びた。
熱いお湯を浴びながら、気持ちをリセットする。
そして髪を乾かし顔の火照りがなくなったら、鏡の前で化粧をしていく。
「……ちょっと濃いかしら。」
いつもは化粧時間は短く、メイクも薄めの菜穂だが、今日は細かい所が気になって何度かやり直した。
服は普段着でいいと言われているが、天野に指定されたホテルは割と高級なホテルだ。ラフな格好ではいけない。
服を着て、改めて鏡の前で自分の姿を見る。
「……これが私……」
鏡に映っていたのは、2人の子を持つ母ではない、1人の女である菜穂の姿だった。
菜穂はそんな自分自身の姿を見て、いつか天野に言われた言葉を思い出した。
〝奥さんは今、女性として一番綺麗な時期を迎えていらっしゃる。それをもっと自覚した方がいいですよ。貴女は危険な程魅力的だ〟
私の、女としての魅力。
智明と結婚して、子育てと家事で忙しい日々を過ごす中で、すっかりそんな自信は失っていた。
心の奥で眠っていた、女として男に求められたいという欲。
それが例え愛の無い黒い欲望だとしても、人の心と身体にはセックスだけで満たされてしまう部分もある事を、菜穂は天野と近藤と身体を重ねた時に知ってしまった。
脳まで蕩けてしまいそうになる程気持ち良い、あのセックス。
しかしそれはある意味、麻薬のようなものだった。依存性があり、続ければ結果として身を滅ぼすことになるだろう。
菜穂はそれも分かっていた、でも分かっていても、どうしてもあの快楽を忘れられなかったのだ。
「……もう、行かなくちゃ。」
そして菜穂は家を出た。