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喰われる人妻 菜穂
第38章 喰われる人妻 菜穂(38)
電車に乗り、ホテルの近くの駅まで移動する。
電車や駅では、通り過ぎる何人かの男性から視線を感じた。
自意識過剰と思うかもしれないが、実際菜穂は見られていた。
元々美人な菜穂が、今日は化粧も服もばっちり決めているのだ。その美しさに男性が思わず目を奪われてしまうのは、当然の事だ。
ホテルに到着すると、胸が高鳴ってくるのが自分でも分かった。
フロントに言うと「あ、天野様の……お待ちしておりました」と、なんと部屋まで案内してくれると言う。
普通のホテルではありえない対応だ。
おそらく一流企業の社長の息子だからこそ、高級ホテルをこんな風に使えるのだろう。
エレベーターに乗り、指定された部屋へ従業員と共に向かった。
「こちらです。ではごゆっくり。」
部屋まで案内してくれた従業員は、そう言うとすぐに去って行った。
部屋のドアの前に立ち、深呼吸をする菜穂。
このドアの向こうに行ってしまえば、もう後戻りはできない。
それは今日だけの話ではない。きっと、もうずっとブレーキが効かなくなって流され続けてしまうだろう。
「……。」
菜穂は5分以上、ドアをノックする事ができずにいた。
すると、そんな菜穂の後ろからある人物が近づいてきた。
「よう菜穂ちゃん、どうしたんだ?そんな所に突っ立って。」
「えっ?……こ、近藤さん!?ど、どうして近藤さんがここに……」
「俺も呼ばれたんだよ、天野部長にね。さぁもう時間だ、早く中に入ろう、天野部長が待ってるよ。」
そう言って近藤は動揺する菜穂を尻目にドアをノックした。