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喰われる人妻 菜穂
第5章 喰われる人妻 菜穂(5)
結局、社員旅行は菜穂も参加する事になった。

あの天野部長と近藤に来て欲しいと言われたのだから、立場上断れる訳がない。


「悪いな、また色々と付き合わせることになっちゃって。」


「ううん。私、智明の仕事の事で何か協力できることがあったら何でもしたいと思ってるし。その方が夫婦二人三脚って感じで良いじゃない?」


「二人三脚か、そうだな。でもあんまり無理させたくないんだよ。菜穂には普段家事とか子供の事とか全部やってもらっているんだから。」


「大丈夫よ。一泊旅行くらいなら子供達は実家に預ける事できるしね。それに社員旅行なんてOL時代以来だし、私出産してからはずっと家にいたから、良い気晴らしにもなるかも。」


菜穂そう言って申し訳なさそうにする智明に笑顔を向けていた。




そしてそれから1ヶ月後、社員旅行当日がやってきた。

近藤が幹事を務める今回の旅行の行き先はとある温泉旅館だった。

移動は3台のバスで。

しかしその日の朝、菜穂は集合場所である事に気付いた。

近藤は社員の家族は自由参加だと言っていたが、周りを見渡しても他の社員で家族を連れ来ているような人は誰もいなかったのだ。

自由参加であるから仕方のない事なのかもしれないが、なんとなく菜穂が想像していた雰囲気とは違っていた。もっと家族連れの人が多くて賑やかな感じの旅行なのかと思っていた。

それに、これも仕方のない事なのだろうが、菜穂以外の女性が殆どいない。

元々女性社員は少ないとは聞いていたが、本当に少ない。菜穂の目で確認できたのは若い女性社員が2人だけ。あとは全員男だ。

だからどうという事でもないのだが、やはりこの社員旅行は、菜穂にとってはあまり居心地の良いものではないようだった。

もちろん、そういう事は覚悟の上だった。

直樹の本採用のためなのだから、今回は旅行を楽しむつもりなんてない。

旅行と言うより接待だと思っていればいいのだと、菜穂は自分に言い聞かせていた。


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