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喰われる人妻 菜穂
第10章 喰われる人妻 菜穂(10)
「やっ……」
不快感から防衛本能が働いた菜穂は、咄嗟に天野の手を払い除けようとしたが、寸前のところでそれを我慢した。
そんな事をしたら、天野が不機嫌になってしまうかもしれないからだ。
下唇を噛んで自分を抑える菜穂。
「それでねぇ奥さん、小溝君の本採用の事なんだがね。」
天野は菜穂の太ももを摩るようにしてイヤらしく手を動かしながらそう話し始めた。
「は、はい……」
「実はもう私の中ではほぼ決まっているんだ。小溝君なら、採用しても誰も文句は言わないだろう。」
「そ、そうですか、ありがとうございます。」
太ももを触られている事に嫌悪感を抱きながらも、菜穂は天野のその言葉にホッとした。
だが話の本題はそこからだった。
「ただし、まだ採用に向けて最後の詰めが残っているがね。」
「最後の……詰めですか……?」
菜穂が少し不安そうにそう聞き返すと、天野はニヤリと怪しい笑みを見せた。
あまりに黒い雰囲気を纏った天野のその表情に、菜穂の不安はさらに大きくなった。
「そう、その最後の条件さえ満たされれば、小溝君を正式に採用できる。」
「条件……」
「そうです。奥さん、正直な話をしましょうか。本当の事を言うと、面接の時点では小溝君を採用するつもりは全くなかったんですよ、全くね。でも私はその後小溝君にチャンスをあげる事にした、なぜだと思います?」
「ぇ……それは……」
「分かりませんか?」
「は、はい……」
「本当に?」
「……はい。」
「では教えましょうか。奥さん、あなたですよ。あなたを一目見た瞬間に私は決めたんです。この夫婦にチャンスをあげようってね。」