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喰われる人妻 菜穂
第2章 喰われる人妻 菜穂(2)
「人事部長の天野さんは天野社長の息子で、将来的にはうちの会社を継ぐことになるかもしれない人だから、天野さんに気に入られれば間違いないぞ。」
智明は近藤が言っていた言葉を思い出し、緊張していた。
これから受ける面接が、この先の人生を決める。
なんとしても成功させなければならなかった。
「小溝さん、どうぞ。」
「は、はい!」
その天野部長による直接の面接。
掛かった時間は、予想よりも大分短かった。
「そうですか、確かに前の会社での実績は大した物だ。う~ん、でもねぇ……いや、実は親しい近藤君からの紹介って事だったから面接しようという事になったんだけどね、うちは今どちらかと言うと中途採用には慎重でね。」
社長の息子だという天野部長は、イメージしていた人物とは違っていた。
歳は智明や近藤より二つ三つ上くらいだろうか。
もっと堅そうな人を想像していたが、なんというか、その容姿は会社員らしくないというか、社会人らしくないというか。
スーツこそ着ているものの、肌は黒く焼け、髪も染めているようだし、なんと耳にはピアスまでしていた。
身に着けているものは高級そうだし、不潔感はないが、どこか軽く見えた。
「では合否については、またこちらから連絡しますから。」
「はい、本日はどうもありがとうございました。……失礼いたしました。」
面接の手応えはなかった。
向こうの態度からは、仕方なく面接をしてやっているという雰囲気が漂っていた。
天野部長の表情は、なんとも面倒臭そうで、さっさと終わらせたいという本音が透けて見えていた。
正直、今まで受けた10社よりも面接の出来は悪いように思えた。
智明は暗い気持ちで家に帰った。