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喰われる人妻 菜穂
第30章 喰われる人妻 菜穂(30)
智明は帰りの車の中で、嬉しそうにしていた。
「天野部長、良い報告を期待していてくれだってさ。これで本当に正社員としての採用が決まってくれればいいな。
酔い潰れて朝起きた時にはもう駄目だと思ったんだけどさ、俺が居ない間菜穂が頑張ってくれてたんだな。ありがとう菜穂、本当に菜穂のお陰だよ。」
「……う、うん……。」
しかし智明と違って菜穂の表情には明らかに元気がなかった。
「ん?菜穂どうした?」
「……ううん、ごめん、少し疲れてるの。」
「そうか、昨日は遅くまで部長達の相手をしてくれていたんだもんな。家に着いたら起こしてあげるから、寝ててもいいよ。」
「うん、そうする。」
車の助手席から窓の外を眺めながら、菜穂はこっそりと涙を流していた。
この二日間で、菜穂は女として守らなければいけないもの、大事なものを捨ててしまった。
その罪悪感と悲しみに、涙が止まらなかった。
しかし、機嫌よく車のハンドルを握る夫の智明は、菜穂のその涙に気付くことはなかった。
そして後日、会社から智明が大喜びで帰ってきた。
「菜穂ぉ!やったよ!本採用だよ!決まったよ!」
そう言って智明は晩御飯の用意をしていたエプロン姿の菜穂に抱き付いてきた。
「ほ、ほんとに?」
「本当だよ、今日天野部長から正式に決まったって言われたんだ。」
「そ、そっか……。」
「あーやっと苦労が報われたよ、長ったなぁ。菜穂も嬉しいだろう?」
「……うん、嬉しい。良かったね、本当に良かったね。」
「ありがとう菜穂。これも菜穂のお陰だよ。天野部長も菜穂に宜しくと仰っていたよ。」
「……。」
心の底から嬉しそうな智明。
智明のこんな笑顔を見るのは本当に久しぶりだった。
「そろそろ給料も入るし、何か菜穂の欲しい物を買ってあげるよ、ここ2年は結婚記念日にも何もしてあげられなかったしな。
あ、それか久しぶりに家族で旅行に行くのもいいな。子供達も喜ぶだろうなぁ。アハハッ、とにかく、こんなに嬉しい事はないよ。これからは安心してこの家で暮らしていけるんだ。家族でさ。」
菜穂は智明の表情を見ながら、心の中で自分に言い聞かせていた。
――智明があんなに幸せそうに喜んでくれている。家族もこれできっと幸せになれる。これで良かったのよ……これで……――
「天野部長、良い報告を期待していてくれだってさ。これで本当に正社員としての採用が決まってくれればいいな。
酔い潰れて朝起きた時にはもう駄目だと思ったんだけどさ、俺が居ない間菜穂が頑張ってくれてたんだな。ありがとう菜穂、本当に菜穂のお陰だよ。」
「……う、うん……。」
しかし智明と違って菜穂の表情には明らかに元気がなかった。
「ん?菜穂どうした?」
「……ううん、ごめん、少し疲れてるの。」
「そうか、昨日は遅くまで部長達の相手をしてくれていたんだもんな。家に着いたら起こしてあげるから、寝ててもいいよ。」
「うん、そうする。」
車の助手席から窓の外を眺めながら、菜穂はこっそりと涙を流していた。
この二日間で、菜穂は女として守らなければいけないもの、大事なものを捨ててしまった。
その罪悪感と悲しみに、涙が止まらなかった。
しかし、機嫌よく車のハンドルを握る夫の智明は、菜穂のその涙に気付くことはなかった。
そして後日、会社から智明が大喜びで帰ってきた。
「菜穂ぉ!やったよ!本採用だよ!決まったよ!」
そう言って智明は晩御飯の用意をしていたエプロン姿の菜穂に抱き付いてきた。
「ほ、ほんとに?」
「本当だよ、今日天野部長から正式に決まったって言われたんだ。」
「そ、そっか……。」
「あーやっと苦労が報われたよ、長ったなぁ。菜穂も嬉しいだろう?」
「……うん、嬉しい。良かったね、本当に良かったね。」
「ありがとう菜穂。これも菜穂のお陰だよ。天野部長も菜穂に宜しくと仰っていたよ。」
「……。」
心の底から嬉しそうな智明。
智明のこんな笑顔を見るのは本当に久しぶりだった。
「そろそろ給料も入るし、何か菜穂の欲しい物を買ってあげるよ、ここ2年は結婚記念日にも何もしてあげられなかったしな。
あ、それか久しぶりに家族で旅行に行くのもいいな。子供達も喜ぶだろうなぁ。アハハッ、とにかく、こんなに嬉しい事はないよ。これからは安心してこの家で暮らしていけるんだ。家族でさ。」
菜穂は智明の表情を見ながら、心の中で自分に言い聞かせていた。
――智明があんなに幸せそうに喜んでくれている。家族もこれできっと幸せになれる。これで良かったのよ……これで……――