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虹の彼方で
第15章 5月ラストの通り雨

お店の外にまで良い香りの漂っていたパン屋さんは、中に入ると、ふわっとパンの香ばしい匂いで包まれてて、思わず幸せな気分になりながら、私は迷わずトングとトレイを手にとった。 

「お嬢さん、ラッキーだね。最後の焼き立てが出るよ」

「ほんとですか?」

「限定20個のレーズンパン、はい、どうぞ」

恰幅のいいおじさんが、奥からカゴを持って出てくると、中にはビニールで包まれた一斤の食パンが入っている。

と、隣の品のいいおばさまが「いただきますね」と1つ手にとって。

また、更に他のお客さんが1つ手にとって…。

驚いているうちに、背後の扉が開いて、明るいおばさんが「ご主人、今日は、パンある?」と尋ねながら入ってくる。

これって、そこそこ人気店って感じ?

(よーし)

奮発しようと心に決めて、レーズンパンを手にとると、他の棚に置かれてたメロンパンと、カレーパンもゲットする。

メロンパンとカレーパンは、明日のランチに学食の代わりにして、レーズンパンは皆で食べよう♪

レジでパンを袋に入れてもらうと、お店のおじさんが「天気雨が来そうだから、気をつけるんだよ」と声をかけてくれた。

なんだか、湿度とか温度を気にしてると、そういうのが分かるようになるらしいんだけど……。



お店を後にした私は、青く晴れ渡る空に「ほんとに?」と首を傾げて、

電車に乗るべきか数秒迷った挙句、

やっぱり1駅分、歩いて帰ろうと、クルルン荘の方角へ向けて身体を向けたのだけど、



家まで残り15分という距離で、

見事に後悔しまくるハメになるのでした……!





   *  *  *





「うっわ……、嘘!?」

急に降り出した雨は、最初は凌げそうな小雨に感じたのに、数秒もしないうちに、一気に豪雨に早変わりしてて。

バケツの中を引っくり返したような、

勢い良いシャワーみたいな雨の中、たまらず走り出した私は、

クルルン荘の玄関にたどり着いた時には、

文字通り、下着の中までびしょ濡れのずぶ濡れという有様……。

パンはビニール袋に包んであったし、カバンも撥水加工だから、なんとか中身は大丈夫かもしれないけど、とにかく服がやばすぎる―――!
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