この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
虹の彼方で
第15章 5月ラストの通り雨
深く甘いキスの波に酔わされて、
ふわふわと身体が溶けそうになる私に、
ジョニーさんは「美咲…」と、時々幸せそうに名前を呼ぶばかりで。
けれど、
その手が、私の腰から下着のゴムに潜り込みかけた瞬間、
はっとして、上体を起こすと、その手を掴んで慌てて制した。
「ジョ、ジョニー……さん?」
見れば、濡れた唇が、いつもの格好良さに色気を盛大にプラスしてて、
その顔を見下ろすだけで、胸がドキドキして声が震えたけど、
でも……、
何か、私も…、変に流されてたけど、
でも、これはおかしい……!
「ジョニーさん……」
もう一度、探るように、そっと名前を呼ぶと、ジョニーさんの表情が、ぼんやりしたものから、ゆっくり、はっきりしてきて。
長いまつげが何度か瞬いたかと思うと、
「あれ? 眼鏡……」
「あ、はい。―――――これ」
勝手に外してしまった眼鏡を渡すと、その眼鏡を片手で柔らかく握り込んだまま、ジョニーさんは何か確認するように周囲を見てから、
その視線を、私と合わせて、
それから私の口元をコンマ数秒見てから、はっと息を飲んだ。
「あっ……、僕は…」
「あの、……寝、ぼけてたん、ですよね?」
「……あぁ。その、…。……美咲ちゃん、僕は、……何を」
「その、なんか、寝ぼけて、すごい抱きしめられて……」
「それだけ?」
静かに畳み掛けるジョニーさんの声に、いつの間にか俯いていた顔を上げる。
その唇が、私とのキスで濡れてるのが視界に入って、
答えに、詰まってしまう―――。
「やけに、リアルな夢だと……、あぁ」
後悔と憤りの混じった声で呟きながら、ぐっと身体を起こしたジョニーさんは、ソファに座リ直すと、軽く頭を振って深く息を吐いた。
「キス、……したんだよね。僕は、君と」
「……」
改めて言葉にされて、その行為の恥ずかしさに、ふわっと目尻が熱くなった。
知らずに手で口元を隠す私に、その動きで答えを汲み取ってしまった、その人は、苦そうに顔を歪めると、また一つ溜息をつく。
床に腰をついて座ってる私からは、ジョニーさんの苦悩の顔が、丸見えで。
どう、答えればいいか分からずにラグを見ていた私の鼓膜を、思いがけない言葉が、くすぐった。
「謝りは、しないよ」
「え?」
「謝りは、しない」