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虹の彼方で
第16章 指は絡めたまま



「なに、してるの……」



ベッドに向かおうとしてたのに、思わず後ずさって、扉の傍に戻ってしまう。



「さぁ」



無表情で曖昧に答える彼は、微動だにしないで、ただ私を見つめていて。

(居心地が、悪い……)

咎められてる気分になるのは……、なんでだろ。



最近は、少し……、

ほんの少しだけど、タクミとも普通に会話できるようになってたと思うのに、

今のタクミの顔は、まるで、初めて出会った時みたいに、どこか冷たくて、険しい。



纏う空気がピリピリしていて、

怖くて……、

同じ部屋にいるのが、危険な気がする。



「じゃ、じゃあ……、自分の部屋、戻れば?」



なんとか絞り出した声は、小さく震えてしまったけれど。

ギシ…と、ベッドを軋ませて立ち上がった彼に、

私の肩はビクッと跳ねてしまったから、

最初から、警戒心を隠すのは、無理だったのかもしれない。



「……」



ゆっくり、

ベッドから入り口へ、

私の方へ、タクミが歩いてくる。



ぶつかった視線が、捕らえられて、逃れられなくて……。



強く見据えられて、顔を逸らせない空気が痛くて。



身体中が心臓になったみたいに、

聞こえるのは、自分の胸の鼓動だけになっていくから

不安で、指が、肩が、震えてくる……。



「……」



扉の横まで近寄った彼が、その時、すっと視線を外した。

手を伸ばせば届く距離。

喉元だって掴める距離。

でも、その瞬間、

まるで強い拘束から解かれたように、私は、ほっと息を吐き出した。



知らない間に、息を止めてたみたいで、

酸欠めいた感覚に、視界がクラッと歪む。



それでも、タクミの手がドアノブにかかると、

私は、安心と、

それから、何故か、罪悪感のような気持ちに襲われた……。



(なんで? 私、何も悪いこと、してないよね……?)



胸の奥がキュッと締め付けられて、

その想いの正体を、考えようとした。

それなのに。





カタッ―――。





ドアノブに伸びたタクミの指は、



ノブではなくて、



鍵に辿り着いて、



そのまま、この部屋を密室に変えた。





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