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虹の彼方で
第16章 指は絡めたまま
「え……?」
鍵からタクミの顔へ視線を向ける。
瞬間、チラリと私を見たタクミの鋭い眼差しと目が合った。
反射的だった。
足が、横に動いていた。
「……ッ!」
理屈じゃなかった。
本能的に身体が逃げていた。
ここに居たら危険だと感じた。
「やっ……! は、なしてッ!!」
直後、手首をつかまれて、無理やり引っ張られて、
強引に後ろから羽交い締めにされながら、
私は首を振ってもがく。
無言のまま、私を捉えようとするタクミの力に、
怖くて涙が溢れそうになるのを、必死にこらえる。
「タクミッ……!」
「……!」
名前を呼んだ瞬間に、
グッと肩口を掴まれて、
身体が反転した。
ドンッ―――
勢いのまま壁に背中を押し付けられて、
衝撃に息が乱れた。
その唇を、何かが荒っぽく塞いできて、
それがタクミだと気づいた時には、
もう、舌が奥深くまで入り込んでいた。
「ふっ……、んっ……」
息が、出来ない……!
背中が痛くて、胸も痛くて、押し付けられてる肩も痛くて……。
呼吸の仕方を忘れたみたいに、頭の奥がクラクラしてくる。
苦しいのに、
絡んだ舌だけが、甘くて、
チュッ…と吸い付かれた音が聞こえる度に、
身体から、力が抜けていく……。
「ぁ……、はっ」
口づけの合間に、微かに息を吸えば、
その隙間さえ埋めるように、塞がれて。
酸素を求めて上を向けば、背の高いタクミのキスが降ってくる……。
キス……。
―――謝りは、しない
(!)
不意に耳に蘇った言葉に、
はっと目を見開いて、思い切り首を横に捻った。
熱く濡らされた唇が、空気に触れて、サッと冷える。
「や、めて……!」
闇雲にタクミの胸を片手で押しのけると、
その手を握られて、
胸が締め付けられた。
振り払えばいいのは分かってるのに、
もう、身体に力が入らなくて。
顔を逸したまま、乱れた呼吸に肩を震わせるしか出来なくて。
軽く引っ張られただけで、身体が揺れて、
あったかいと思った時には、
私は、タクミの腕の中に、いた。