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虹の彼方で
第17章 バスケ部のワンコ
「ただいま!」
「あ、おかえり」
階段を折りきったところで、ちょうど帰宅した翼と鉢合せして、
心底、安堵して、私は微笑んだ。
今は、年上3人と食卓を囲むのは、避けたかった。
「練習しんどかったー。ね、もう、飯、食っちゃった?」
「うぅん、今から」
翼が嬉しそうに微笑むと、その頬にはエクボが生まれる。
「すぐ行く。てか、双子も…」
ガチャ―――☆
会話の途中に、扉が開く。
「ただいま戻りました」
「……」
「お帰り、夏樹君。春樹君。ご飯、今からだよ」
「すぐ行きます」
3人とも、空腹で仕方ないみたいで、会話もそこそこに2階へ駆け上がってた。
1人、残されて、リビングへの道を見るけれど、
ちょっと行きにくい。
困ったな……。
「どうしよ……」
ポツリと呟くと、私の声に答えるように「どうした?」と頭上から声がかかった。
見上げれば、Tシャツとハーフパンツに着替えた翼が、足早に降りてくるところだった。
練習のせいか、急いで帰ってきたせいか、額の汗が、まだ引いてなくて。
それを腕で拭う姿が、不覚にも、そこそこ、かっこいい。
「なんでもない。いこ」
「うんうん。腹減って死にそう」
翼と共にリビングに入ると、マサさんが、7人分のスープを、各テーブルに配膳してるところだった。
「あれ? 皆の帰ってくる時間……」
タイミングがバッチリすぎて驚くと、ジョニーさんが「美咲ちゃん」と名前を呼ぶ。
トクンッと胸を震わせながら、キッチンを見ると、カウンターにおいてある携帯を指さされた。
あ、そういうことか。
皆、帰宅時間をメールしてたんだ。
納得もそこそこに、翼が私の手を引っ張って座席に座らせる。
「はやく、食おう! メシメシ♪」
翼ってば、テンション高い。
思わず笑いだした私に、マサさんも釣られて笑いながら「翼、まだだぞ。春樹と夏樹が降りてきてからだからな」と釘を刺す。
その言葉に、心底つらそうな顔をした翼が、「ばれなきゃいいじゃんなー」と私に同意を求めてくるから、「だーめ。待て、翼」と躾けておいた。
良かった。
いつもの空気だ。
ジョニーさんが、私の隣へ移動して、椅子に手をかけたタイミングで、
扉が開き、双子くん達も食卓にやってきた。