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虹の彼方で
第17章 バスケ部のワンコ
「そいや、地区大会、いつなんだ?」
食後のお皿を片付けながら、マサさんが尋ねる。
「僕達は、6月10日・11日です。インターハイは7月24日になります」
夏樹君の答えに、翼が苦笑する。
「うわー。勝ち上がる気マンマンじゃん」
「うちが勝つし」
めったに喋らない春樹君が、夏樹君より早く、返事をした。
双子君の通う南王台(なんおうだい)も、強豪校。
お互いシード枠だから、勝ち上がったとしたら、地区大会3回戦目で、ぶつかって、それがインターハイへの決勝戦になる。
「初戦でバテんなよ、2人とも」
「翼はスタミナ配分」
珍しい、翼と春樹君の言い合いに、夏樹君が苦笑した。
「春樹、風呂入ろう」
「ん」
喧嘩になる前にサラリと仲裁した夏樹君が、春樹君を誘って脱衣場へ行こうとした。
「あ、ずりぃ!」
「お先に頂きます」
お風呂を"頂きます"なんて、古風な言い方をしつつ、余裕の微笑みを浮かべて翼に一礼する夏樹君も、案外負けず嫌いっぽい。
「負けた」
椅子に腰掛けて項垂れる翼に、食後のお茶を入れてるジョニーさんが、喉を震わせて笑う。
「試合で勝てば、いいんじゃない?」
「んー……」
「なんだ、翼。そんなに悔しいなら、おまえ、一緒に風呂でも入ってこいよ」
「えぇぇ?」
ジョニーさんのフォローにむくれてた翼は、マサさんのダメ押しに素っ頓狂な声をあげた。
「っはははは」
思わず笑ってしまったら、恨みがましい目で見られたけど、でも、仕方ないでしょ?
可愛いワンコめ。
くすくす笑いを堪えながら「がんばれ」とだけ言えば、「うー」と唸ってから、翼は椅子を引いた。
「2階で、シャワー浴びる」
「うん」
「あ、美咲ちゃん」
「あ! そうだった。あのね、制服が干してあるの。ちょっと待って。私も行く!」
リビングを出ていこうとした翼に、私も急いで立ち上がると、一緒に2階へ向かった。