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虹の彼方で
第17章 バスケ部のワンコ
2階に上がって、シャワー室に引っ掛けてある制服のハンガーを外す。
まだ乾いてないから、一旦、私の部屋に避難させればいいかな。
「翼、シャワー終わったら教えてもらえる? また、これ干したいから」
「うん。……てか、それ、洗ったの、ヤス兄じゃね?」
「え、分かるの?」
「んー。……ヤス兄、洗濯バサミ、横に止める癖あんだよね」
言われて、ハンガーに服を止めてる洗濯バサミが、横向きなことに気づく。
「今日、帰りがけに通り雨に降られちゃって。お風呂に入ってる時に、ジョニーさんが制服だけ、洗ってくれたの」
「ふーん」
なんだかもやっとした声で返事しながら、翼が狭い脱衣所で服に手をかける。
「わっ。ちょっと……!」
「え?」
「そんな、急に脱ぎださないでよ……! 恥ずかしいでしょ」
「そう?」
「当たり前でしょ?」
廊下に出れば、扉を締めながら「こっちは女子なんだから」と文句も同室させてやった。
親しき仲にもナントカカントカ……、と頬を膨らませると、
その場を立ち去ろうとした私の耳に、微かな呟きが聞こえた気がした。
「俺だって……」
「……?」
静かな廊下に漏れた翼の声は、
聞き返そうとした時には
シャワーの音で、流されてしまった後だった。
* * *
ガチャッ―――☆
扉の音に、ベッドに寄りかかって本を読んでた私は、顔を上げた。
3cmほど開いたドアが、そーっと締まりかけてる。
「つーばーさ?」
ノックしないで部屋に入ってくる人は、私の記憶では一人しかいない。
私の呼びかけに、
隙間が消えかけたドアがピタリと止まって、再び開くと、
そこには、やっぱり翼の姿があった。
「ノックしてって言ったのに」
「わ、かってんだけど、なんか、癖で」
「もう……。あのね、信頼してるから開けてるんだからね? いつでも入ってきて構いませんって意味じゃないんだから」
申し訳なさそうに頷く大型犬の姿に、「困った青年め」と苦笑すると、本を閉じて立ち上がる。