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虹の彼方で
第17章 バスケ部のワンコ
「お風呂、きもちよかった?」
クローゼットの扉に引っ掛けてあったハンガーを手にしながら尋ねると、
「すっきり。てか、俺、メシの時、汗臭くなかった?」
なんて尋ねるから、
「全然? なんか、デオドラント系の匂いしてたよ、翼」
と答えつつ、一緒に廊下に出る。
「そういうとこ、気を使ってくれてるんだなって思うし。翼のいいところだよね」
「んー、そう?」
「うん。あ、でも、ここの人達、あんまり汗臭いって感じたこと、ないかも……」
お風呂も綺麗だし。
ゴミも散らかってないし。
こまめに掃除してるから?
そんなことを考えながら脱衣場の扉を開けると、微かに湿った空気が外に流れた。
けれど、シャワー室の扉を開けると―――。
「あ……。翼、壁、拭いてくれたの?」
「うん。洗濯物、干すって分かってたし」
「嬉しい。ありがと」
振り返って笑うと、天井の方にあるパイプにハンガーを引っ掛けようとして。
「貸して」
横から身体を滑り込ませた翼が、私の手から制服を取ると、高いそこに引っ掛けた。
「あ、りがと」
狭い入り口で、身体が微かに触れて、ちょっと照れくさくなりながらもお礼をすると、
「もう1個も」
と、声がかかる。
あ、そっか。
スカートも渡すと、少し距離を開けて、干してくれた。
シャワー室のせいかな。
ちょっとだけ、シャンプーの匂いがする。
これ、翼の匂い……?
「ありがとね」
妙に気恥ずかしくて目を合わせられないままに、
照れ隠しの明るい声で返事をすると、
身体を引いて、彼から離れる。
「美咲って、身長いくつ?」
「え?」
「163くらい?」
「わ、……なんで、分かるの?」
驚いて顔をあげると、屈託なく笑う翼の顔があった。
「あ、当たった! っはははは、今度さ、初戦でぶつかる相手。俺がマークするかもしんない奴が、163なんだよなーって思って。美咲くらいかなって、今、思ったんだよ」
あ、バスケか!
「初戦ってどこ?」
「加瀬北(かせきた)か、白選工業(はくせんこうぎょう)」
「強いの?」
話しながらシャワー室を出ると、なんとなく廊下で立ち止まる。