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虹の彼方で
第18章 7色の夜
「決断、なぁ……」
夏樹君を見送る私の耳に、低くておおらかな声が響く。
「簡単に言ってくれるよなぁ? あいつ」
笑いながら手招きするマサさんに、おずおず近寄ると、ジョニーさんとの間に空間を作り、ポンポンとソファの座面を叩かれた。
「あ、……お邪魔します」
「喜んで」
茶目っ気混じりに微笑むジョニーさんが、足を斜めにして、私が真ん中に入りやすいようにしてくれる。
……足、ながい。
いちいちパーツが美しいお兄さんから目をそらし、ローテーブルの辺りを眺めると、ふと視線を感じて、吸い寄せられた。
目があったタクミは、無言のまま一つ瞬くと、スッと視線をそらす。
「はい、美咲」
ソファの後ろを回ってきた翼が、私の前に麦茶のグラスを置いて、タクミの向かい側のラグに腰をおろした。
「ありがと」
「そこそこ居心地もいいもんだろ。なぁ、美咲」
「……はい」
マサさんの冗談めかした言い方に、麦茶のグラスを持ち上げて思わず微笑む。
別に、特別扱いされてるわけじゃないのも分かってる。
この家では、皆、お互いのことを助け合って生活してる。
困ってる人がいれば手伝うし。
疲れてる人がいれば労う。
まるで、家族みたいな関係……。
「家族、みたいですよね」
「ん?」
気づいたら、言葉がするりと溢れてた。
「一人じゃないんだなって、思いながら、過ごしてます」
「……」
私の言葉に、部屋の空気が少し変わった気がした。
「そうだね。美咲ちゃんには言ってなかったけど、僕たちは、お互いを良きパートナーだと思って生活してる」
ジョニーさんの声に、ふっと顔を向ける。
「違う人間だから、時々ぶつかることもあるし。意見が合わないこともある。でも、相手を尊重する気持ちは忘れないようにしよう……っていうのは、マサさんの口癖」
「え?」
意外な言葉に振り返ると、マサさんは、照れてるのか、あらぬ方向を見ながら珈琲を飲んでいた。