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虹の彼方で
第19章 掌の温もり
「起きれるか?」
そう声をかけながら、開けっ放しのドアから入ってきたマサさんは、
向かいの椅子に腰掛けながら、私の様子を伺ってくれる。
そっと、体を起こすと、昼過ぎよりは大分痛みがマシになっているのが分かった。
マサさんに顔を向けて、まだ、ぼーっとする頭のまま、小さく笑って頷くと、
スープ皿を手渡される。
ほんわり湯気があがる卵雑炊が、いい香りをさせていた。
あぁ…、あったかい……。
「朝から顔色が悪かったからな。貧血でも起こしやしねーかと心配はしてた」
「……え。私、顔色、悪かったですか?」
「頬が白かった」
食えよ、というマサさんに、「いただきます」と呟いてから、ゆっくりと、温かい雑炊を口に運ぶ。
一口たべると、思い出したようにお腹が空いてきて、驚いた。
あれ……、美味しい。
「うまいか?」
「はい」
「そうか」
嬉しそうに笑うマサさんは、「そういや、明後日だな」と呟いた。
「……、あ、地区予選…?」
「あぁ……。去年は、翼の四葉北がインターハイの切符を取ったけど、あれから双子も成長したから、今年は分からねーぞ」
「去年も、あの3人、戦ってたんですね」
「双子はスタメンじゃなかったけどな。それでも南王台(なんおうだい)の隠し玉ってことで、すげぇ話題にはなってたな」
「スタメンじゃ、なかったんだ……」
「あいつらな、パスを互いにしか回さなかったんだよ。チーム戦なのにな」
思い出したのか、マサさんはククッと低く笑う。
「あいつらは2人だけなら強いけど、チーム戦になるとボロが出る。バスケは一人で戦うゲームじゃねぇだろ?」
私が頷くと、マサさんも頷いた。
「そこら辺、もう分かる年だろうから、今年の南王台がどう仕上がってくるかが、見所だろうな。……よし、食えたな」
偉いぞ、と子供を褒めるみたいに言いながら、
マサさんは私の手からお皿を受け取ると、一旦机に置いて。
傍に戻ってくると、徐に布団の中に手を差し入れた。
……え?