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虹の彼方で
第21章 ときめきのエール
足音を立てないように、恐る恐るリビングに入っていくと、
ソファに座ってた翼が、口に運んでいたピザを空中で止めて
「うーわ」と呟いた。
その声に、背中を向けて座ってたタクミが振り返る。
「へぇ…?」
「な、何よ」
「別に」
挑発するような声に、むっとして返すも、タクミは口の端を小さく持ち上げただけで、
再び私に背を向けて缶ビールに手を伸ばしている。
その様子が、どうも、からかわれてる気がして、つっかかろうと一歩踏み出したら、
その背中を後ろからグイと押されて、思わず私はつんのめった。
「ちょっ―――、っわわわ!」
「おおお、悪い悪い」
転びかけた私の腰を支えてくれたのは、
「マサさん!?」
「なんだ、美咲。そんなとこに立ってないで、主役の傍に行ってやれよ」
そのまま、更に前に押し出そうとするものだから、私は靴下で踏ん張って抵抗する。
「や、……イイです!」
片手に新しい麦茶のペットボトルを持ったマサさんは、
反対の手で、更に、私の背中を押そうとした。
途端、抗おうとした靴下が滑って、重心が後ろに傾きかける。
「美咲!?」
「美咲ちゃん!」
ソファから翼が立ち上がって、
釣られて双子君が立ち上がるのが、視界に入ったのだけど
返事をする暇も無く―――
「ひゃっ……!!」
ドン―――☆
慌てて膝を曲げて転倒を避けようとしたせいで
私は、タクミの背後に盛大に尻もちをついてしまった。
勢いで、そのまま後ろへゴロンと後転しそうになるのを、マサさんの掌にカバーされる。
「おー、盛大にずっこけたな、美咲。平気か?」
「大丈夫…です。……って、いや、元はと言えばマサさんが!」
隣に腰をおろして視線の位置を合わせてきたマサさんに食ってかかろうとして、
私は、自分の胸元が空いていることを思い出し、ハッと自分の肩を両手で抱きしめる。
と、その時、妙な感覚が、太ももに伝わって―――。
「ん?」
転んだ拍子に足の間に落ちてしまっていたボンボンが、サワサワする感覚だった。
サワサワ―――?