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虹の彼方で
第3章 金髪男とひまわり君

声を殺して涙を止めようとしてる私の手首に、そっと何かが触れて、思わず肩を跳ねさせながら、そっと指の隙間から外を見る。

あぁ……、

お兄さんが、不安そうな顔で膝立ちしながら、私の方を覗き込んでくれてた。



「美咲ちゃん……、大丈夫? ごめん、驚いたよね」



その声があったかくて、優しくて、安堵した途端、止まりかけた涙が、また溢れてくる。

でも、悪いのはお兄さんじゃないもの。

悪いのは、あの金髪の人。



声が出せないまま、首を振っていると、リビングのドアの開閉音が聞こえた。



あの人が戻ってきたのか、と身体を固くした直後、

「ヤス兄!? 何してんの!?」

また知らない男の人の声がして、私は慌てて顔を拭って身体を起こした。



涙目のまま辺りを見渡すと、あの金髪の人は居なかったけど、

ブレザー姿の男の子が、こっちを見て目を見開いていた。

毛先がやんちゃに跳ねた黒髪、人懐っこそうな顔立ち、シャツのボタンを2つ外して、赤のネクタイをゆるく締めた男の子。



高校生っぽいから、同い年かもしれない……。

でも、この人とも挨拶なんて、しない方がいいのかな。

私は、追い出されようとしてるんだし……。



そう思うと、不安が押し寄せて、また泣きそうになってしまう。



「ツバサ。これは、その。違うんだ」

「や、……違うって、その、ねぇ?」

どうしたらいいものか、と言いたげに、男子くんが微笑んでくるから、私も泣きそうな顔で笑う。

「……あー、どうしよ。俺も泣かせちゃいそう」

「"も"って言うな。泣かせたのは僕じゃない」

「だって、ヤス兄、めっちゃ近寄ってたじゃん。寄りすぎ」

「え? あ……、ご、ごめん、美咲ちゃん」

慌てたように、ラグに膝立ちしてたお兄さんが立ち上がり後ずさる。

「……ん、ううん。違うんです」

この涙は、なんというか、びっくりしちゃって出ちゃったというか、と説明しようとしたら、男子くんが、また大きな声で「あ!!」と言い出した。


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