この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
虹の彼方で
第5章 バスタイム
ガタッ―――☆
「きゃっ!」
「う、わっ!!」
前触れ無くシャワー室の扉が横スライドして全開になったものだから、
私は、丸めたジャージを、ドッジボールよろしく胸前に抱え込むしか出来なかった。
さっと外の涼しい空気が狭い脱衣スペースに潜り込んで、剥き出しの肩が冷える。
肌寒い!
でも、そんなことより、心が底冷えした!!
だって、開けてきた男は、金髪男だったんだもの……!
「おまえ……、な、んで、そんなとこにいんだよ!」
「わわ、わ、るい、ですか? シャワー貸してくださいって、マサさんに言いました!」
「あ、のなぁ……」
細い目がナイフというより、もう触れたら切れちゃうワイヤーみたいになってく。
こわいよぉ、何、この人。
必殺仕事人か、なにか?
仕事人は、一歩、脱衣スペースに入ると、私の脱衣カゴの下の棚から何かのボトルを取る。
一瞬、ジャージボールを抱えている私の手の甲に、男の吐息が触れた。
それっくらいの近距離を、ずかずか自分のやりたいことだけ優先した男は、顔をあげると、引き戸を指差して不愉快そうに顔を歪める。
「鍵、しめろ。ガキ」
「え? ……だって、あるの、気付かなかったんだもの!」
「おまえ……、頭わいてんじゃねーの? 警戒心なさすぎ」
「う、るさい……!」
「ま、そんな貧弱そうな身体、抱いてもつまんねーだろうけど」
「……なッ」
必死になって言い返してたのに、男は言いたいことだけ言うと、扉を開けっ放しにして、さっさと廊下を歩いて行ってしまう。
な、んなの……!
何、あれ!
なに、あれ!
勝手にドア開けたの自分でありながら、ごめんなさいとか、言うでしょ、普通!
どういう神経してんの!?
怖いのと、悔しいのと、理不尽な憤りのごった煮を煮込みながら、私は、男が立ち去りきってから、思い出したように扉をバンとしめた!
もちろん、鍵もして!