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虹の彼方で
第5章 バスタイム



ガタッ―――☆



「きゃっ!」

「う、わっ!!」

前触れ無くシャワー室の扉が横スライドして全開になったものだから、

私は、丸めたジャージを、ドッジボールよろしく胸前に抱え込むしか出来なかった。

さっと外の涼しい空気が狭い脱衣スペースに潜り込んで、剥き出しの肩が冷える。



肌寒い!



でも、そんなことより、心が底冷えした!!



だって、開けてきた男は、金髪男だったんだもの……!



「おまえ……、な、んで、そんなとこにいんだよ!」

「わわ、わ、るい、ですか? シャワー貸してくださいって、マサさんに言いました!」

「あ、のなぁ……」

細い目がナイフというより、もう触れたら切れちゃうワイヤーみたいになってく。

こわいよぉ、何、この人。

必殺仕事人か、なにか?

仕事人は、一歩、脱衣スペースに入ると、私の脱衣カゴの下の棚から何かのボトルを取る。

一瞬、ジャージボールを抱えている私の手の甲に、男の吐息が触れた。

それっくらいの近距離を、ずかずか自分のやりたいことだけ優先した男は、顔をあげると、引き戸を指差して不愉快そうに顔を歪める。

「鍵、しめろ。ガキ」

「え? ……だって、あるの、気付かなかったんだもの!」

「おまえ……、頭わいてんじゃねーの? 警戒心なさすぎ」

「う、るさい……!」

「ま、そんな貧弱そうな身体、抱いてもつまんねーだろうけど」

「……なッ」

必死になって言い返してたのに、男は言いたいことだけ言うと、扉を開けっ放しにして、さっさと廊下を歩いて行ってしまう。



な、んなの……!

何、あれ!

なに、あれ!

勝手にドア開けたの自分でありながら、ごめんなさいとか、言うでしょ、普通!

どういう神経してんの!?



怖いのと、悔しいのと、理不尽な憤りのごった煮を煮込みながら、私は、男が立ち去りきってから、思い出したように扉をバンとしめた!

もちろん、鍵もして!

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