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虹の彼方で
第6章 歓談
あの時、「何かあったら俺も相談のるよ」と、食器を片付けつつ話かけてくれたのも、翼だった。
出会って間もない私に、笑顔で挨拶してくれて、輪の中に引っ張り込んでくれて、明るくて楽しそうな同級生…。
そんな友達が出来るのは嬉しいし、本当は一緒に暮らし続けたら、きっと楽しいだろうなーとも思うのだけど。
「翼……」
「まだ初日に、こんなこと言うのアレだけどさ。うちのメンバー、結構いい奴だと思うんだよねー。タク兄にしても、口は悪いかもしんないけど、根はいい人だし……」
「……うん」
「あー、その……、なんていうか、うまく言えないけど」
頭をクシャクシャっと掻き混ぜてから、翼は唇を尖らせる。
「うちで、過ごせば、いいじゃんか」
拗ね混じりの言い方は、叱られて耳がヘタッと下がった犬みたいで、ちょっと可愛い。
目が合って、思わずニコッと微笑んでしまったら、今度はふわっと顔が赤くなっていく。
翼の百面相に和みながら、私も穏やかに「うん」と答える。
「あぁは言ったけどね……、正直、はっきり答えが出てないのも確かで…。私も、まだ自分のキモチ、決められてないんだ」
「……そうなの?」
「うん。だって、皆と生活できた方が家事全般とか楽なのは間違いないでしょ? ……だから、前向きに考えるのも、アリかな……って思ったりも、してる」
「まじ!」
歯切れ悪い私の言葉にも関わらず、シーツに手をついた翼が、ぐいっと身体を前のめりにした。
不意に近づく距離感に、目を見開いて顎を引くけれど、
私以上に目を見開いてニコニコと嬉しそうに笑う翼は、はしゃぎたくて仕方ない犬みたいで。
「っふふ。うん。だから、その……、よろしくね」
ちょっと迷ったものの、可愛い大型犬をあやすみたいに、彼の頭を、手のひらでヨシヨシと撫でてみた。
「あ、……っははは。うん。わかった」
はっとした彼は、自分が前傾姿勢になってたことに気づいたみたいで、照れたように笑うと、姿勢を戻しながら強くブンブンと頷いた。
「翼ってば、ほんとに犬みたいなんだもん。私、今、飛びかかられるのかと焦った!」
「あー、なんか、思った以上に嬉しくてさ。気づいたら、グイグイ前に出てた」
「うん。私も"待て"って言うべきか、迷った」
二人で他愛もないことを言って笑ってると―――。