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虹の彼方で
第6章 歓談
トントン―――☆
扉の音に、二人して顔を入り口へ向ける。
一瞬、視線を交わしてから、ちょっと迷いつつも、私は口を開いた。
「どうぞ?」
「失礼します」
きちんとした挨拶と共に扉を開いてきたのは、双子くんの片割れ、夏樹君だった。
「夏樹君?」
「お邪魔します、美咲さん。……あ、お邪魔でしたか」
「へ? い、いえいえいえいえ! ただ、楽しく喋ってただけだから。ね? 翼」
「おう」
「そうですか。実は2階の各部屋の持ち主について、ご説明がまだだったと城西さんに聞いたので、ご案内すべきかとおもって、お邪魔したのですが」
「あ! そうだった!」
お風呂から戻る時に、どの部屋に誰がいるのか、後で聞きたいなって思ってたんだった。
「お。じゃあ、俺の部屋にも今度遊びに来いよ、美咲」
「え? いいの?」
「もち。中は散らかってるけど、外観は綺麗デス」
「や、それ、当たり前でしょ。廊下だし」
突っ込みながらも、ベッドから降りる翼に続き、床へ降り立つ。
2人で入り口に向かえば、よく見ると、彼の身体は左半身しか私の部屋に入ってなくて。
その気の使い方が、なんだか丁寧で、こちらも折り目正しくしなきゃ…なんて思ったり。
「夏樹君、お願いします」
一つ頭を下げると、夏樹君は涼しげに微笑んで頷いた。
「はい。……十神(とがみ)さん、ご一緒しますか?」
「いや、俺は自分の部屋、戻る。話したいこと話せたし」
「分かりました。お休みなさい」
「ん。お休み」
柔らかく笑って一礼する夏樹君の肩をポンと叩き、翼が先に部屋を出ていった。
それを見送ってから、ふわっと振り返る夏樹君の顔は、本当に整った日本人形みたいで綺麗で。
長めの黒髪に、綺麗な瞳、白い肌、ほんのり赤い唇。
……あかん。負けそうオブザビューティ。
勝手に胸の中の敗北感に唇を噛む私なんて知ってか知らずか、彼は一流のアテンダントさながら綺麗に微笑むと、「行きましょう」と廊下へ歩きだした。