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虹の彼方で
第7章 2時のココア
トントン…、トントン……
他の人に気づかれないように、すごくすごく控えめなノックになっちゃう。
心細くなる小さなノックを繰り返しながら、私は暗い廊下を振り向くことさえ出来なくて。
犯人が私を追いかけてきたら、どうしよう、とか。
何か盗まれてたら、どうしよう、とか。
怖くて不安で緊張の糸が切れかけてて。
カチャッ☆
静かな開錠の音に、目に涙が浮かんで、扉が開いた瞬間、
部屋の中のマサさんに、
「……!!」
「な!」
息が止まりかけて、堪えてた涙が、一筋頬を伝った。
開かれた扉の中、オレンジ色の光で照らされてるのは、金髪男……!
「お、まえ……」
「あ……、ぁ」
そうだ!
端の部屋、って覚えてたけど、マサさんの部屋は反対の端っこだった。
びっくりして、逆に走ってた!
「……ご、めんなさい……!」
急いで、その場から逃げ出そうとするのに、足が震えて腰が抜けそうで……。
「入れ」
その場に崩れ落ちそうになった瞬間、金髪が私の手首を掴むと、グイと部屋の中に引っ張った。
強い力に、身体が強張る。
それでも有無を言わせない金髪に引き寄せられて、足がもつれそうになりながら、
私は、
きっと一生入らないに違いないと思っていた、嫌味ったらしい男の部屋に、転がり込まされた。