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虹の彼方で
第7章 2時のココア
* * *
待ってろ、と声をかけて、金髪は一度部屋を出て行った。
「一人にしないでよ」と喋る気力も無くて、ただ部屋の隅で体育座りして身体を丸めるしか出来なかった。
この隙に、マサさんの部屋に行こうと思ったけど、廊下に出た瞬間、犯人に出会ったらと思うと怖くて…。
この後、どうしよう、と思ううちに、扉が開く。
「!」
「俺」
パッと振り返った私に、適当に声をかけながら、戻ってきた金髪は何かを私に差し出す。
マグカップ……?
上目遣いで見上げるけど、金髪の顔は薄暗い室内灯の中、影になってて見えない。
そっとカップを受け取ると、「熱いからな」と言葉少なく言いながら、金髪は私から少し離れたベッドに腰掛けた。
あ、……ココアだ……。
「ったく、今何時だ? くそ、マジかよ……! 2時ですってよ? んー?」
「……ごめん、なさい」
「おーおー、反省しろ。しかも、人の部屋の前で泣きべそなんて、ありえねーし。俺が泣かしたと思われんだろーが。耐えろ」
「……ッ」
人が泣いてるのに、相変わらず辛辣な金髪に、身体がますます縮こまる。
「とりあえず、飲んで、ちょっと落ち着け」
生理かよ、と呟きながら、金髪は大きなベッドにゴロッと仰向けになった。
最後の一言は、ものすっごく余計…!
そう思いながらも、温かくて甘いココアを一口飲むと、興奮していたキモチが、少しずつ収まっていく。
金髪の部屋は、綺麗に片付いていて、ちょっとオシャレな空間だった。
さっきから部屋を柔らかく照らしているのは、四角い木の枠をいくつも重ねた、ジェンガみたいな間接照明。木の間から漏れるオレンジ色の優しい光が、心を落ち着けてくれる。
それから、壁が幾何学模様みたいな不思議なデザインのモノトーンで彩られてて、ちょっと近未来っぽい雰囲気。
机は私の学習机よりも、建築士が図面ひけるようなだだっ広い感じで、メタリック調なのかな? 全体的にシルバーの色味がかっこいい。
正直、もっとパンクロックで、ショッキングピンクのウィッグとかグラサンとか、クロムハーツとか、じゃらじゃら飾られてると思ったから、このギャップは意外だった。