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虹の彼方で
第7章 2時のココア
どうしよう、この論戦、絶対に勝てる気がしないよー!
穴があったら入りたい! 穴が無いならマグカップでもいいー!
ココアの中に現実逃避したい!
「それで、鍵開けて寝てて、……何あったよ」
不意に、低く尋ねられて、甘い液体をじっと見つめてた私は引っ張られるように彼を見た。
すごくすごく、真剣な目で、緊張のせいなのか、恐怖のせいなのか、胸が大きく高鳴った。
ぶつかった目が逸らせなくて、じっと数秒見つめ合うと、彼は再び口を開く。
「テンパって俺の部屋に来ちゃうくらいには、危機的状況だった、ってことじゃねーの?」
あれ、なんだろ……。
金髪の言葉は、全然、棘があるままだと思うのに。
なんでかな。
(あったかく、感じる……)
「あーあー、おいおい」
「え?」
気づいたら、また新しい涙が、目尻に生まれてて。
はっとして目を擦ると、面倒そうに立ち上がった金髪がティッシュの箱を突き出してきた。
「擦ると、ブサイク度、増すぞ」
「なっ……!」
前言撤回、あったかさなんて、微塵もない!
ろくでなしの、ひとでなし!
ティッシュを豪快にシュッシュッと取ると、箱を戻した金髪は、今度は私の向かいに腰を降ろして胡座をかいてくる。
ちょっと、そんな近寄らないでよ。
「で? 俺は安眠妨害されて、ココアまで作らされるはめになったんだから、理由くらい聞けるよな」
うわ、ゲスな言い方……!
ココアは別に、私、頼んでないし。
「それに、この部屋に今、お前を居候させてんだから」
うっ……、それは、ごもっとも。