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虹の彼方で
第9章 土曜の朝




ほんとに、この中に、私の部屋に入ってきた人が……いるの?



考えかけた私の耳に、椅子に腰をおろすマサさんの声が聞こえた。

「よし、食うか」

胸の前で手を合わせると、微笑んだジョニーさんが、私に倣ってくれる。

あ、なんか……、嬉しい。

そう感じると同時に、皆を疑いかけた自分に、ちょっとだけ罪悪感を覚えてしまって。



食事の時くらい、美味しい料理に集中しよう…。



そんなことを思いながら、私は、皆と一緒に「いただきます」と笑顔で頭を下げた。



   *  *  *



ごはんは、どのおかずも美味しくて、ほっぺた幾つも地面に落としてしまって、

私、頬が無くなるかと思った!

西京焼きは、マサさんに尋ねたら「サワラだ」って教えてくれた。

ちょっと旬の時期は外れてるらしいんだけど、良い切り身があったから、昨日から仕込んでたんだって(本当にプロ)。

たけのこの煮物は甘くて歯ごたえも良かったし、塩昆布で和えてあると思ったきゅうりは梅肉ソースが絡めてあって、酸味も感じて食事の良いアクセントになったし。

切り干し大根には挽肉が入ってて、そぼろみたいで食べやすい上に、厚焼き玉子は、出汁の風味が利いてて飽きない味。

表情筋を緩めっぱなしで食事してたら、不意に隣でジョニーさんがくすくす笑い出す。

「ん? ……どうしたんですか? ジョニーさん」

「あはは。いや、美咲ちゃん、凄い幸せそうに食べるなぁ、って思って」

「っははは。朝飯がうまいと幸せだろ、美咲」

「はい。マサさん、お料理、凄いお上手なんですね!」

「学生の時に、こっち出てきたからなぁ。自炊歴は、まぁまぁ長い方かもしれん」

「幾つの時に、来たんですか?」

「ハタチだ。それから、ずっと自炊だから、自炊歴は8年目くらいだな」

「え……!? マサさん、28なんですか?!」

「あぁ? なんだ、その驚き方。おい、美咲、てめぇ俺を幾つだと思ってやがった」

「や、いや……」


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