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虹の彼方で
第9章 土曜の朝

口ごもった私に、ジョニーさんが微笑んでる。

その横で、「おかーわり」と楽しそうに節をつけた翼が席を立った。

通り過ぎようとした翼に、春樹君が「翼、俺も」と茶碗を差し出して―――。

「えっと……、30くらい、かな、って?」

マサさんの表情を伺いながら言ってみたけど、実際は30半ばくらいの貫禄を感じてたんだよ、マサさん身体大きいんだもの!

「おい、ジョニー。そいつ、今、嘘ついたよなぁ」

「ははは。そうですね、そんな気がします」

「つ、ついてないです!」

そんな会話をしながらの朝食は、本当に美味しくて、楽しかった。



   *  *  *



食後のデザートは、蜂蜜ヨーグルト。

甘さ控えめのそれを食べていたら、向かいの夏樹君に「美咲さん」と声をかけられた。

「昨日、一つ案内し忘れたんですが」

「? うん」

「このシェアハウス、各自の部屋は内側から鍵をかけられますが、個室に関しては外からも鍵がかかります。鍵は、机の引き出しの裏側にテープで貼ってあるはずなので、剥がして使ってください」

あ、……そういうことか。

だから、タクミは私の部屋の鍵を見つけられたんだ。

ちらっとタクミを見るけど、彼は私に見向きもせず、自分の食器を重ねてる。

「鍵は各自で管理して、メゾン・ド・クルール退去のタイミングで返却です。紛失の場合、鍵交換のお金がかかるので注意して下さい」

「分かった。ありがと、夏樹君」

いえ、と微笑む彼は、ガラス細工みたいな不思議な雰囲気がある。

「そういや、夏樹。お前、美咲に朝食の時間、伝えたか?」

「いえ。昨日は2階全体をご案内しただけでしたので」

「へぇ? 美咲。お前、良く朝飯の時間に降りてきたな」

「あ」

ずいと身体を押し出したマサさんが、鋭いことを言ってきて、ドキッとする。

えっと……。

理由を言ったら、昨日のことを、色々と話すはめに、なる、よね?



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