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虹の彼方で
第9章 土曜の朝

「えっと……」

「お先に」

わたわたしながら言い訳を考えてる私の言葉を遮るように、食器を片付けたタクミが、リビングに背を向けた。

一瞬、皆の視線が、タクミへ逸れる。

少しほっとして、朝ごはんに間に合った理由を捏造してたら、助け舟みたいに翼の声が飛んだ。

「タク兄」

「ん?」

「明日、遅番?」

「いや、明日は早番」

「そしたら、夜、久々に2:2しねー?」

「いいぜ? 双子つかまえとけ」

「うす」

妙な会話に気をとられかけると、振り返った翼と目が合った。

大きな黒い瞳に見つめられて、なんだか見抜かれそうで頬が熱くなる。

「ん? あ、で? 美咲、なんだっけ?」

「あ……うん、その、私のウチ、土日の朝食が、これっくらいの、時間、だったの、で」

何故か返事を翼にしてしまったけれど、不自然じゃなかったはず。

はっとして振り返ると、「へぇ」と頷きながら呟くマサさんは、精悍な表情を崩して微笑んでいた。

そのまま、深く気にする風もなく「そりゃ、ちょうど良かった」と続ける。

「夏樹、基本サイクル、お前、教えてやれ」

「はい」

誤魔化せた、かな?

ちょっと不安だけど、真実を知るタクミは、もう部屋にはいない。

椅子を引く音に、見れば、マサさんがジョニーさんのお皿と自分のお皿を重ねて立ち上がってた。

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