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虹の彼方で
第9章 土曜の朝
「美咲さん」
片付けをマサさんに任せて珈琲を味わうジョニーさんに、ふっと見惚れかけたら、向かいから声をかけられる。
その涼しげな声に反射で姿勢を正すと、翼が横で肩を震わせだした。
ちょっと、夏樹君が不機嫌になっちゃうかもしれないじゃない…!
「順を追ってお話しますね」
「はい。お、お願い、します」
私の不安をよそに、静かに微笑んだままの夏樹君は、表情一つ変えないまま言葉を紡いだ。
勉強を教わる生徒みたいになってる私の横から手がのびて、私の食器も、翼に重ねられる。
小声で「ありがと」と言いつつも、私は、少し落ち着かない感じで夏樹君に相対した。
「土日を中心に、お話します。美咲さんは学生ですから、僕らと同じ土日祝日お休みの生活になるかと思います。基本的に、この家の住人は、月本さん以外は土日祝日お休みです」
「ツキモト、さん?」
「タクミのこと」
隣から、ジョニーさんが、柔らかくフォローしてくれた。
あ、そっか。
ジョニーさんが動かなかったのは、説明のフォローのため?
「月本さんは、平日休みなので、土日も、僕らと一緒に食事が出来ないこともあります」
「そっか。さっきも早番?とかって言ってたもんね」
「えぇ。明日は、この時間には、月本さんは不在です」
そうなんだ。
「基本的に、土日祝日は、朝食が8:30、昼食が13時、夕飯は19時。この流れです。平日は、朝食が7:00、夕飯は20時前後です」
「はい」
あくびをした春樹君が、皿を重ねてシンクに持っていき、すれちがうように戻ってきたマサさんが、ソファのあるリビングへ移動していった。
翼は、そのままシンクで洗い物を始めてる。
「料理担当は、大体、土曜日は内田さん。日曜日は城西さん。平日は、十神さんが作ってくれる日が多いです」
「うん。僕とマサさん、翼の3人で、料理担当…っていうイメージかな」
珈琲カップを一旦テーブルに置くと、ジョニーさんの長い腕が、片付け忘れられてた醤油の瓶をキッチンカウンターへと運ぶ。
「え、じゃあ…」
思い出して、冷蔵庫の方へ視線を向けると、昨日見たネームプレートの上には"ゴミ出し"の文字。
あ、ゴミ出しかぁ。