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虹の彼方で
第10章 後ろから
なんとなく、マサさんは違う気がする。あんなに身体が大きくなかった……、気がする。
ジョニーさんだとも、思いたくない。この家一番の紳士な気が、するし……。

(じゃあ、翼?)

思わず、さっきの彼の腕の感覚を思い出して、ドキッとした。
ほんとは、彼の腕の感覚、昨日の感じに凄い似てる気がした……。けど、そんなはず無いと思って、混乱して逃げちゃったんだ。
昨日、二人でベッドで話した時は、あんなことするような人に、見えなかったし。信じたいと、思ってる。

夏樹君は、時々すごい辛辣な空気を感じるけど、常識人ゆえだと思うし、春樹君とは、そもそも接点が、まだ、無い……。

「あ―――」

声を上げて、ベッドに身体をずり上げた。

仰向けに寝転がって、布団を抱きまくら代わりに抱きしめる。

毛布の温もりと、微かに香る匂いに、「タクミだ……」と思って、何故か心が安堵する。

あぁ、だめだめ。

安心感の出処も間違ってるし、ついでに眠くなりかけるのも、何か違う!

左右にゴロゴロしてから、気合を入れて、ガバッと身体を起こした。



今夜は鍵を締めて寝ればいいし!

それに、本当に、犯人?の、ただの気の迷いかもしれないし!

疑ってたら霧が無いし。

タクミの言うことに従うのはシャクだけど、ちょっと、そのキスされたくらい!

「なんてことない」

全ては鍵を閉め忘れた私がいけなかったせい。

それで解決!

うん!

「よし」

無理くり結論を確定させると、両腕をまくって、勢い良く立ち上がる。

ボストンバッグに入れてた学校のノートや教科書を取り出してとにかく机の上に並べた。

それから、洋服。

これはワンシーズンの数着しか持ってないから、明日、どこかに買いにいこう。

バスタオルとかフェイスタオルは、ここにあるのかな?

借りられるものも確認しなきゃ。

強引にでも、思考を新しい生活に向けて、

部屋を出た私は、鍵をかけて階段を降り、

翼との対戦ゲームに没頭することに決めた。

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