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虹の彼方で
第10章 後ろから
* * *
翼のゲームセンスのハイクオリティっぷりに、何度か絶望を味わって、
帰ってきたマサさん達と、それから留守番してた夏樹君も一緒に、
皆でお昼ごはんを食べた。
今日のランチは、天ぷら蕎麦♪
天ぷら購入の報告メールをくれたマサさん達のために、翼と2人でおそばを用意してたら、
帰宅早々、洗濯物に気づいたマサさんに
「今度、ワガママ聞いてやる」って褒められたりして。
反対にジョニーさんには「甘やかさないでくださいね」って釘をさされちゃった。
食後、双子くん達は部屋に戻ったけど、マサさんとジョニーさん、翼もソファに座ってて。
私は、食後の洗い物を進んでやらせてもらってる。
翼が手伝う?って聞いてくれたけど、首を振った。
広くて大きなシンクって、洗いやすくて楽しい。
ソファでは、何かのゲームをローテーブルに並べながら、ジョニーさんと翼が話してる。
―――と、マサさんが立ち上がってキッチンにやってくる。
「洗います?」
マサさんが手にしてたカップに目を向ければ、昨日より緩めのオールバックの、その人は「ちげーよ」と穏やかに笑った。
「おかわりセルフなんだ、この家は」
そう言って、私の後ろを通り過ぎてコンロのやかんを持ち上げてる。
「言ってくれたらお湯沸かしたのに」
「いいよ。つか、お前、皿だって、別に春樹辺りに洗わせりゃいいんだぞ?」
その人選の根拠も気になったけど、私は曖昧に笑って頷くにとどめる。
「お前、家政婦じゃねーし。俺達の、まぁ、仲間みてーなもんだろ?」
「嬉しい」
照れ混じりのマサさんの言葉に、思わず笑みを零しながら最後のお皿を綺麗に洗う。
「俺にやらせたっていいんだぜ?」
「ワガママ、聞いてくれるから、ですか?」
お皿をラックに立てかけると、布巾を洗って固く絞り、シンクの周りに飛び散った水を拭いて……。
「そうだよ。俺を使ったっていいのによー」
カップにお湯を足したマサさんが隣で動きを止めた。
淡い珈琲の香りが、ふわっと鼻孔をくすぐる。
私、珈琲は苦手なんだよなぁ。
マサさんも大人だなと思いながら、綺麗にシンクを吹いていると、一口喉を潤す分の静寂の後、低い声が聞こえた。