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虹の彼方で
第11章 日曜の夜

にしても……。

(翼ってば……、ノックして部屋に入ってきたこと、無いんじゃないの?)

昨日、私の部屋に入る時も、勝手に部屋あけようとしてた、よね?

思い出しながらベッドに散らかった服をたたんでいると、背後から規則正しいノックの音。



トントン―――☆



「はーい」

「美咲ちゃん?」

ジョニーさんの声に、なんとなく安堵しながら、心の中で翼に言い聞かせる。

(いい? 翼、誰かのお部屋に入る時は、こうやってノックするの)

まったく……、本人に見せつけてやりたい、ジョニーさんの大人の対応。

「ちょっと待ってください」

「分かった」

ベッドの上の洋服を片付けて、最後に姿見の前でくるりと1回転して、服が変じゃないか確認してから、私は扉を開けて、ジョニーさんに一礼した。

「お待たせしてごめんなさい」

「うぅん。……あ、それ、今日、一緒に買った服だね」

「あ、そうなんです」

部屋にジョニーさんを招き入れながら、「どうですか?」って嬉しくなって尋ねてしまう。

「明日、この格好で学校、行こうと思うんですけど」

「いいと思うよ。凄い可愛いし、似合ってる」

「ほんと? 嬉しい」

笑点症候群よ、さらば。

イケメンに褒められるって、こんなに幸せになれるものなんだなぁ。

嬉しくて楽しくて、甘い飴玉をいっぱい舐めてるみたいな気持ち。

上機嫌で溶けそうになってたら、ジョニーさんが手にしてた英和辞典をポンと叩く。

「それで? 引っかかってる単元は、どこ?」

小さく首を傾げながら確認してくるジョニーさんは、優しいのに理知的な空気があって、こんなお兄さんがいたら、一生お嫁に行けなくなっちゃうくらいの破壊力。

「あ……、はい。えっと……」

見惚れて水飴みたいにトロントロンになる前に、私も椅子に座ると、翼に借りたノートを開いた。

「ここ、写そうとしてて、文が読み取れなくて……」



私が指差した文章を、ジョニーさんが真剣な顔で覗き込み、



私も一緒に、英文を再確認しつつ、



頭を真剣モードに切り替えた―――。



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