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虹の彼方で
第12章 ヨツキタのアイドル
「すごい、いい天気だね……」
「あのね、美咲。そういう話するために、ここに来たんじゃないの!」
「え?」
彩乃の剣幕に視線を向けると、彼女は屋上をくまなくチェックして、人がいないのを確かめてた。
あらゆる物陰をチェックすると、早足で戻ってきた彼女は、私の腕を掴んで屋上の端っこへ移動する。
「で? 十神と一緒に住んでるって、それ、ホントなの?」
「あ……、うん。あ、でもね、彩乃。私達、二人で住んでるわけじゃないよ?」
「2人じゃないとしても、同じ家ってだけで、もうアウトなんだってば…!」
「なんで?」
「いい? 美咲。十神 翼は、ヨツキタのアイドルなの。親衛隊がいるくらいなんだから」
「し、親衛隊!?」
今時!?
「うちの高校のバスケ部、そこそこ強くて、一応、毎年全国に行ってるの。十神はスタメン」
「……うそ」
「練習嫌いだけど、パス回しとかドリブルとか、とにかくテクニックが凄くて、他校にもファンがいるんだもの」
な……んだって!?
その女子に言いたい!
彼、部屋に入るとき、ノックしないんだよ!って!!
驚いて「そう」としか返事できない私に、彩乃が大仰に溜息をついた。
「十神は、ことごとく女の子の告白ことわってるから、"好きな子がいるんだ"とか"本当はホモなんだ"とか、色々噂も立ってるような奴だよ? だから、その……気をつけて?」
「わ、分かった……」
って、気をつけるって、どう気をつければいいの!?
多感な女子高生を敵に回すとか、したくないよぅ。
怖い!
なんて思った直後、予鈴がなったのが聞こえた。
「わ、やば…! 行くよ、美咲」
「うん」
……なーんて話をしたせいか、帰り道における、周りの女子の視線が気になる気になる!
朝は"興味本位"くらいに見えてたのに、帰り道ではもう、"証拠を探すパパラッチ"みたいなテンションに見えてきて、周りの人達が怖いというか、この状態が落ち着かないというか、とにかくうつむきがちに歩くしか出来なくて。
翼の声にも、曖昧に「うん」って頷くだけに留めてたら、駅についたところで、不意に肩を掴まれて正面を向かされた。