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虹の彼方で
第2章 イケメンお兄さん
* * *
それから、お兄さんと改めて話をした。
お兄さんの名前は、城西泰人(じょうにし やすひと)。
ここの住人で、大学3年生らしい。
専攻は応用科学? 詳しく分からないけど、いわゆる理系男子。
それから、他には、社会人の28歳と、専門卒の21歳、私と同じ学校に通う高3、別の学校に通ってる高2の双子がいるんだとか。
このシェアハウスは双子ちゃんのおばあさまが管理してるらしくて、最後の空き部屋に新人がくるからって、昨日は皆で前夜祭してくれてたらしくって(私、いないのに!)。
美咲って名前も、女子みたいって話題は上がったらしいんだけど、男にもいる名前だし、ネームプレート先に作っておいてあげようって、一番字の綺麗な人が書いてくれたとか(誰だか忘れたけど)。
緊張しながら、色々と話を聞いたりして。
私も、自分の事情は一応、話せたと思う。
両親が海外出張に行くから、元の家は売り払ってしまってること。
高校の編入手続きが終わってて、来週から新しい学校に行くつもりでいること。
大学進学まで、ある程度のお金は自分の口座に入れてもらえること。
ここのシェアハウスの賃料は母親が一括で支払ってるはずだということ。
話しながら少しずつ冷静になってきたけど…、考えてみたら、私、この家に住めないとしたら、一人暮らし出来る場所を探さなきゃいけないんだ…。
口には出さないようにしたけど、その不安は凄く大きかった。
話しながら、微妙に沈んでしまう声に気づいたのか、お兄さんは、粗方事情を聞いてくれた後、ふっと立ち上がった。
反射的に顔を上げると、どこの俳優さんですかって聞きたくなるようなノーブル感満載で、微笑みながら、私を見下ろしてる。
「ちょっと、部屋、見てみる?」
「え……」
「どうなるか分からないけど、ほら、シェアハウスの中なんて、見たことないでしょ?」
「あ、……はい」
楽しそうに言われて、自然と、微笑み返せてた。
そうよ、美咲。
社会科見学だと思って、ちゃっかり色々と見せてもらった方が将来の役に立つかもしれないわ。
私はソファから立ち上がると、お兄さんの後をついて二階へと階段をあがっていった。