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虹の彼方で
第13章 こんな夜も
「双子ボール」
タクミの声に、夏樹君がボールを持ってゴール下へ移動すると、春樹君が一瞬目を閉じて、深呼吸した。
その直後―――。
「え……」
時が止まったかと思うほど、
何かあっけなく、
春樹君は、ディフェンスの翼とタクミの横を、するりとすり抜けて、夏樹君の前を通り去った。
「嘘……」
そのまま、レイアップのシュートが決まる―――
パスッ―――
ゴールの音に、唖然とする翼と、苦笑するタクミをよそに、夏樹君がボールを手にすると、
「どうぞ」と、2人に向けて差し出した。
そのボールを受け取ったタクミが、翼の肩を叩いて「あせんなよ」と耳打ちしてる。
いや、あれは……焦る、よね……
翼とタクミが攻め始めたドリブルの音を聞きながら、私はさっきのプレイを思い出してた。
人間業じゃないってことはなくて、もちろん人間なんだけど……
一気に重心を落としたかと思ったら、そのまま横に移動してて……
「電光石火……って感じ」
虚空を見つめて、呆然と呟いた時だった―――
「美咲ッ!」
誰かに鋭く名前を呼ばれたと思った瞬間、眼前に影が広がって、
ズザァッ―――!
ベンチを倒しながら、私は背後のネットに向かって誰かと一緒にふっとばされていた…!