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虹の彼方で
第14章 思い、それぞれ
「あ、きたきた。柏葉(かしわば)君…!」
彩乃の声に、その視線の先を見ると、入り口から入ってきた男の子がペコペコ頭を下げてた。
遅れてきたのかな?
顧問の先生が、その男の子に何か耳打ちすると、……あ、翼の敵チームに入っていく。
「ユウタ、悪い。遅くなった」
「すっげぇ大変だった。ごめん、点差やばい」
「任せとけ。十神先輩なら、止められる」
楽しそうに会話してるけど、おそろしいほどのビッグマウス。
翼は……、あ、笑ってる…。
てっきりカッとなってるかと思ったら、楽しそうに微笑みながら、遅刻してきた子に拳を掲げてた。
「やってみろ」
「了解っす」
2人は笑いながら拳をつきあわせると、笛の合図で表情を変える。
「赤ボール!」
審判の男の子の声で、ゲームが再開した―――。
* * *
疲れた……!
バスケの試合みるだけで、どうして疲労するんだろうって思うでしょ?
でもね、手に汗握るって、まさに手に汗が溜まるくらい力が入るってことなのですよ。
休憩を含めて1時間弱。
ほとんどずっと、私は白い鉄柵を握りしめていたのだけど、私の汗で、その鉄柵1本だけが腐食が早まってしまうんじゃないかって心配!
それくらい、息をつかせない戦いに、ハラハラしてしまった。
彩乃イチオシの2年生君は、柏葉 颯太(かしわば そうた)君というらしいのだけど、彼が入ってから、試合の流れは明らかに変わった。
柏葉君の入った青チームのメンバーの動きが良くなったし、シュートチャンスが増えた。
それを止めるために、翼のいる赤チームの動きも機敏になるし、その分、攻撃にバリエーションがついていた。
結果は、86-82 で、赤チームの勝ちだったんだけど……、
終わった直後に、柏葉君が「くっそ!」って言いながらコートに拳を突き立ててたのが印象的だった。
練習試合なんだけど、多分、皆には"練習"って感覚は、無いんだろうな。