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虹の彼方で
第14章 思い、それぞれ
「15分休憩。皆、その間に振り返りしとけー。最後にダッシュ50本するぞー」
物思いに耽ってたら、顧問の先生の声が聞こえてきた。
彩乃を見ると、……あぁ、なんか涙目で悔しそうに柏葉君を見てる。
分かるなぁ……、私も胸が熱いもの。
「彩乃?」
「うん。……そだね、行こ」
本当は、もうちょっと見てても良かったけれど、気づいたら外が薄暗くなってたから、
私と彩乃は、ゆっくり階段を降りて、体育館を後にすることにした。
壁際を抜ける時に、ちらっと振り返ったけれど、翼は私に全く気付いてないみたいで、柏葉君と真剣に話しこんでいた。
* * *
一度、部室に寄っていくという彩乃と分かれて、私は一人、帰途についていたのだけど。
(あれ? やっぱり)
何か、左足首に違和感を感じる。
鈍い痛み。
必ず痛むというわけじゃないのだけど、何か妙な感じで。
地元の駅でバスを待っている間に、なんとなくローファーの爪先を立てて左足首を回してみたら、角度によってツキンと痛むことに気づいた。
(これって、もしかして……)
昨日、ベンチから転げ落ちたせい?
「まさか、ね……」
夕方まで痛くないとか、それは流石にないでしょ。
年寄りの筋肉痛じゃあるまいし。
バス停に滑り込んできた路線バスに、定期入れを取り出しながら、私は小さく笑ってステップを踏んだ。
前方の席に腰掛けたところで、後からやってきたお客が私の隣に立つ。
臙脂色の服は、双子君の高校のブレザーと同じ色だなぁ、なんて思いながら目を閉じかけたら。
「よ」
「え?」
声をかけられて、見れば、綺麗な黒髪に整った二重、白い肌の双子君その人が、立ってた。