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虹の彼方で
第14章 思い、それぞれ
「わ、分かった…から」
自分で靴下を脱ごうとするのを、手を掴んで制される。
?
見ると、彼は、まだ私を見上げてた。
「動かすな。俺がやる」
「え?」
「自分でやると、足、捻る」
「……うん」
器用に靴下をくるくると巻くように脱がすと、春樹君は、そっと、私の足に触れた。
男の子に足を触られるって、その……、緊張するんだけど……。
でも、うん、これは、治療? だよね!?
春樹君が片手でふくらはぎの下の辺りを支えて、足裏全体を反対の手で動かしながら、私の顔を見た。
や……、そんなマジマジ見られると、照れ……
「ッ…‥!」
「ここ?」
「アッ……、そこ…」
ある角度で細く尖った痛みが走り、思わず眉を寄せると、一度確認するように捻られた。
手が離れて痛みが消えると、彼はスプレー缶の蓋を開けて軽く振ってる。
そっと足を下ろしていたら、再び持ち上げられて足首にスプレーを吹きかけられた。
「ひゃっ……」
その冷たさに変な声を上がるも、春樹君は何事もないようにテキパキと動く。
スプレーを終えると湿布に切り込みを入れて踵から足首までを包むように貼り付ける。
その湿布が動かないようにテーピングで固定すると、薄い布のサポーターを被せた。
「2日くらいで良くなる」
「……うん」
「俺、ちょっと怒ってる」
ハサミや湿布を片付けながら春樹君が口にした言葉に、私は「へ?」と首を傾げた。
「俺が言えって言ったら、言え」
あ、……痛みのこと?
「変な癖ついて、怪我しやすくなる」
「心配、してくれたの?」
「そう」
「ごめん。昨日のせいだと、思わなかった」
「じゃあ、何か痛くなったら、いつでも言え」
「……いつでも?」
「いつでも」
立ち上がった春樹君は、私を見下ろして言い切ると、何事もなかったように部屋を出ていこうとする。
「あの! ありがと!」
慌ててお礼を言うと、ドアを開けながら「明日の夜、湿布、取り替えるから」と予告して、彼は視界から消えていった。