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篠突く - 禁断の果実 -
第3章 本編三話 悪事千里を走る
「おとなしそうな顔してよくやるよな」
「地味でおとなしい女ほど非処女だって言うけど、まさか委員長が、ねえ……」
「証拠、あるの? ……無いでしょ?」

 無言は肯定と取られる。気がつけば私はそんな言葉を漏らしていた。

「そんなの知らねぇよ。だけど、これが事実じゃないなら、なんでまず否定をしないわけ?」

 河内が言った。彼はバカではないようだった。

「その人そっくりの声真似ができる人っているじゃん?」
「……あんた、私を陥れたいんでしょ?」

 敵なのか味方なのかわからぬ意味不明な発言をする河内に、私は苛立ちを抑えきれずに聞いた。

「うん。委員長の言う通りだよ。別に、お前ら倉橋姉弟がセックスしてようとしてなかろうとそんなことはどうでもいい。ニュースでさ、人気の芸能人が薬やってたなんて報道されるっしょ? それ見た瞬間、すげぇ気持ちいいの、わかる? そういうことだよ」

 ゾッとした。この男には、堕落する人間を見るのがたまらなく快感だということだ。だが、人の不幸は蜜の味。誰しも他人の不幸話は好きだろう。ゾッとしたのは、この男の言い分である。

「……呆れた。勝手にしてよ。いいオカズになるといいわね」
「バカか。嫌いな人間をオカズにするわけねぇだろ」

 河内は相手にするべき人間ではないと悟り、私は無視を決め込んだ。ここでは既に全員が敵なのだ。孝哉以外は。私は、孝哉の目をしっかりと見据えて言った。
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