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篠突く - 禁断の果実 -
第1章 本編一話 罪を重ねる
「……わざわざ言わなくてもいいじゃない。彼女、傷つくわよ」
「林さんは、俺が好きじゃないことぐらいわかってるよ。どっちにしろ傷つけるんだ。嘘吐いたって仕方ないでしょ」
「…………好きにしなさい。……だけど、彼女に裏が無いとも限らないってこと、忘れないでよ」

 呆れてベッドから這い出した私の手首を、孝哉が掴む。

「……水、飲むの」

 孝哉は私を離そうとしない。それどころか再びベッドの中へ引きずり込んだ。彼は、私が後ろから抱きしめられることに弱いことを知っている。

「…………」
「……姉さん」

 耳元で囁かれて、私はびくりとした。とうに声変わりをして昔より低くなった弟の声は聞き慣れていた筈だが、この非日常的な情景が、彼の“男”を際立たせる。

「……狡い」
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