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篠突く - 禁断の果実 -
第7章 過去編一話 癒えぬものは

暑いのだろう、彼女は時折雑誌を畳んでは、団扇代わりにして自らを扇いでいた。家の二階にあるこの部屋は直に太陽の光を浴びる。そのため、気温は三十度を優に超えていた。エアコンを取り付ける予定は当分無く、室内には扇風機が一台あるだけだ。二人に風がくるようにその首を回しているのだが、そっぽを向かれた時のあの暑さといったらたまったものではない。
アイスを食べ終わり、吐息混じりに「暑い、溶けそう」と声を漏らした悠は、そのままどさりと仰向けに寝転がった。単調な模様の天井をじっと眺めていると、頭がぐるぐると回るような心地がして、彼女は目を閉じた。恐らく、暑さにやられたのだろう。暫くの間そうしていると、足元のほうで何かが動く気配を感じた。
「……孝哉?」
目を開ければそこには、立ち上がり、勉強机を背にして伸びをする弟の姿。
「俺も休憩」
孝哉はそう言うと、悠の隣に同じように寝転がった。安物のベッドは、ぎしりとスプリングの軋む音を立て、悠の左半身を沈ませる。幼少の頃は毎日のように共に寝ていたが、こういう感覚を味わうことはなかった。体格は良くもなく悪くもなく普通で、身長は百七十センチといったところか。きっとまだまだ伸びるのだろうが、すっかり立派な青年に成長した弟を、悠は誇らしく思った。
アイスを食べ終わり、吐息混じりに「暑い、溶けそう」と声を漏らした悠は、そのままどさりと仰向けに寝転がった。単調な模様の天井をじっと眺めていると、頭がぐるぐると回るような心地がして、彼女は目を閉じた。恐らく、暑さにやられたのだろう。暫くの間そうしていると、足元のほうで何かが動く気配を感じた。
「……孝哉?」
目を開ければそこには、立ち上がり、勉強机を背にして伸びをする弟の姿。
「俺も休憩」
孝哉はそう言うと、悠の隣に同じように寝転がった。安物のベッドは、ぎしりとスプリングの軋む音を立て、悠の左半身を沈ませる。幼少の頃は毎日のように共に寝ていたが、こういう感覚を味わうことはなかった。体格は良くもなく悪くもなく普通で、身長は百七十センチといったところか。きっとまだまだ伸びるのだろうが、すっかり立派な青年に成長した弟を、悠は誇らしく思った。

