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篠突く - 禁断の果実 -
第7章 過去編一話 癒えぬものは

ふと、悠が孝哉のほうを見ると、彼は目をつぶって安らいだ顔をしていた。時折、扇風機の風がその柔らかな前髪を撫でていく。彼はかなりリラックスしているようで、暑いのに心地良さそうだった。
風に吹かれて舞う髪が、それまで隠れていた額をちらりと覗かせた。次の瞬間、悠の瞳が驚きに見開かれる。何故なら、そこには見覚えのないものが浮かんでいたからだ。
(何、これ……知らない傷……)
孝哉の、抜けるように白い肌にはひどく目立つ、一筋の赤い線。痛々しく斜めに走るそれは、まだ新しい傷のようだ。
まさか、と思った。小学生の頃、孝哉は同じクラスの男の子三人にいじめられていた。それでよく、体中に傷をつくっては泣きながら家に帰ってきたのだ。高校には慣れたと言っていた孝哉だが、まさか、今でも――?
「孝哉……あんた……」
上体を起こして呼びかけると、孝哉は目を開いた。
「何?」
彼は、傷が見えていることに気がついていないのか、それとも気にしていないのか。後者なら、悠の思い過ごしなのだが――。
風に吹かれて舞う髪が、それまで隠れていた額をちらりと覗かせた。次の瞬間、悠の瞳が驚きに見開かれる。何故なら、そこには見覚えのないものが浮かんでいたからだ。
(何、これ……知らない傷……)
孝哉の、抜けるように白い肌にはひどく目立つ、一筋の赤い線。痛々しく斜めに走るそれは、まだ新しい傷のようだ。
まさか、と思った。小学生の頃、孝哉は同じクラスの男の子三人にいじめられていた。それでよく、体中に傷をつくっては泣きながら家に帰ってきたのだ。高校には慣れたと言っていた孝哉だが、まさか、今でも――?
「孝哉……あんた……」
上体を起こして呼びかけると、孝哉は目を開いた。
「何?」
彼は、傷が見えていることに気がついていないのか、それとも気にしていないのか。後者なら、悠の思い過ごしなのだが――。

