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篠突く - 禁断の果実 -
第7章 過去編一話 癒えぬものは

悠がその傷に触れようとして手を伸ばすと、孝哉は怯えたようにびくりと震えてきつく目をつぶった。そんな反応をされてしまっては、悠は途中で手を止めるしかなかった。
「……いじめられてるの……?」
悠の言葉で傷が見えていたことに気がついた孝哉は、微かに目を見張り、息を止めた。だが、すぐに息を吸って、吐き、不自然にそう繰り返す。その呼吸は丁度、物陰に隠れて息を潜めている人間のそれだった。
「昔みたいに、お姉ちゃんがやっつけてあげようか?」
張りつめた空気を変えたくて戯けたように言ってみれば、孝哉は鬱陶しそうに冷えた声を上げる。
「……やめてよ、そういうんじゃないから」
「じゃあ何だってのよ。喧嘩? それとも転んだとか下手な嘘、吐かないでよ」
なおも問いつめる悠に面倒そうな表情を向けて、孝哉は深く溜め息を吐いた。
「……いじめじゃないよ。喧嘩でもないし、転んでもない」
「じゃあ――」
他に何があるのよ。そう言おうとした悠の声を遮って、孝哉はぼそりと呟いた。
「父さんと、母さんだよ」
「……いじめられてるの……?」
悠の言葉で傷が見えていたことに気がついた孝哉は、微かに目を見張り、息を止めた。だが、すぐに息を吸って、吐き、不自然にそう繰り返す。その呼吸は丁度、物陰に隠れて息を潜めている人間のそれだった。
「昔みたいに、お姉ちゃんがやっつけてあげようか?」
張りつめた空気を変えたくて戯けたように言ってみれば、孝哉は鬱陶しそうに冷えた声を上げる。
「……やめてよ、そういうんじゃないから」
「じゃあ何だってのよ。喧嘩? それとも転んだとか下手な嘘、吐かないでよ」
なおも問いつめる悠に面倒そうな表情を向けて、孝哉は深く溜め息を吐いた。
「……いじめじゃないよ。喧嘩でもないし、転んでもない」
「じゃあ――」
他に何があるのよ。そう言おうとした悠の声を遮って、孝哉はぼそりと呟いた。
「父さんと、母さんだよ」

