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篠突く - 禁断の果実 -
第8章 過去編二話 生きた証

「は……?」
父さんと母さん。そう言った孝哉に、悠は戸惑いの表情を向ける。
「今、なんて……?」
「父さんと母さんって言ったよ」
「どういうこと……?」
「この傷を付けたのは、父さんと母さんってことだよ。意味、わかるでしょ」
勿論、孝哉が言っていることの意味はわかっていた。でも、そんなことは信じたくない。悠は、優しい両親の顔しか見たことがない。けれど孝哉には、そうではなかったということか。
「ぎゃ……ぎゃく……ぎゃく……」
四文字の言葉を言おうとして、しかし、声が詰まる。無理やりに開いた口は、壊れたロボットみたいな声を漏らした。その言葉を言ってしまったら、あの優しい両親を裏切ることになる気がしたのだ。
「虐待」
だが、孝哉はその四文字を、さらりと何でもないことのように言う。
「……嘘でしょ……?」
「嘘じゃないよ」
悠を暗い闇の底に突き落とすような、凍てついた、いやに現実を感じさせるその声。
信じられない、といった様子で自分を見つめる姉に一種の憐れみのようなものを覚え、孝哉は眉根を下げて微笑った。
「……姉さんは知らないだけだよ」
父さんと母さん。そう言った孝哉に、悠は戸惑いの表情を向ける。
「今、なんて……?」
「父さんと母さんって言ったよ」
「どういうこと……?」
「この傷を付けたのは、父さんと母さんってことだよ。意味、わかるでしょ」
勿論、孝哉が言っていることの意味はわかっていた。でも、そんなことは信じたくない。悠は、優しい両親の顔しか見たことがない。けれど孝哉には、そうではなかったということか。
「ぎゃ……ぎゃく……ぎゃく……」
四文字の言葉を言おうとして、しかし、声が詰まる。無理やりに開いた口は、壊れたロボットみたいな声を漏らした。その言葉を言ってしまったら、あの優しい両親を裏切ることになる気がしたのだ。
「虐待」
だが、孝哉はその四文字を、さらりと何でもないことのように言う。
「……嘘でしょ……?」
「嘘じゃないよ」
悠を暗い闇の底に突き落とすような、凍てついた、いやに現実を感じさせるその声。
信じられない、といった様子で自分を見つめる姉に一種の憐れみのようなものを覚え、孝哉は眉根を下げて微笑った。
「……姉さんは知らないだけだよ」

