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篠突く - 禁断の果実 -
第8章 過去編二話 生きた証

悠と同じく上体を起こした孝哉は、黒い半袖のTシャツを脱ぎ捨てて諸肌脱ぎになった。少し筋肉のついたその背中に浮かぶ痛々しい傷や痣が、夏の陽光に照らされて皮肉っぽくきらきらと光る。悠は、目を大きく見開いて頭を振った。
鋭利なもので裂かれたような赤い傷。ミミズ腫れのような茶色の線や、青紫の痣、赤茶色の根性焼きのような斑点が一面に広がっている。それらの傷痕は背中や腕などに集中していて、普段目につくような場所には無かった。額のもの以外は。
「……ね。嘘じゃないでしょ」
「なんで……? いつから……?」
悠の口をついて出たのは、そんな言葉だった。
何故、両親は孝哉を虐待したのか。何故、自分はされずに、弟である孝哉だけが虐待されたのか。
自分が見ていた両親の顔は、偽物だったというのか。それとも、孝哉が見ていた両親の顔こそが、偽物だったというのか。
悠の頭の中で、疑問がぐるぐると渦を巻く。
「姉さん。昔、父さんが母さんにDVしてたのは覚えてる?」
脱いだTシャツに袖を通しながら、孝哉はふと、そんな質問をした。
父が母に対して暴力をふるっていたのは知っている。初めて知ったのは、瓶底で殴られたような痕が幾つも残った、母のひどい顔を見た時だった。
孝哉は、ぽつりぽつりと語り始める。
鋭利なもので裂かれたような赤い傷。ミミズ腫れのような茶色の線や、青紫の痣、赤茶色の根性焼きのような斑点が一面に広がっている。それらの傷痕は背中や腕などに集中していて、普段目につくような場所には無かった。額のもの以外は。
「……ね。嘘じゃないでしょ」
「なんで……? いつから……?」
悠の口をついて出たのは、そんな言葉だった。
何故、両親は孝哉を虐待したのか。何故、自分はされずに、弟である孝哉だけが虐待されたのか。
自分が見ていた両親の顔は、偽物だったというのか。それとも、孝哉が見ていた両親の顔こそが、偽物だったというのか。
悠の頭の中で、疑問がぐるぐると渦を巻く。
「姉さん。昔、父さんが母さんにDVしてたのは覚えてる?」
脱いだTシャツに袖を通しながら、孝哉はふと、そんな質問をした。
父が母に対して暴力をふるっていたのは知っている。初めて知ったのは、瓶底で殴られたような痕が幾つも残った、母のひどい顔を見た時だった。
孝哉は、ぽつりぽつりと語り始める。

